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登り山の儀式

テーマ:曳山・歌舞伎
昨日は、春とも思えない低温の寒風吹きすさぶ中、自町狂言が行なわれました。13日番は悪天候の為、稽古場で行ないましたので、私自身にとっては、パヴァーヌさんがご覧下さった一番が、実質的に長浜での山の上での太夫デビューとなりました。

2回の自町狂言を終え、準備が整いまして、午後2時半頃いよいよ八幡宮に向けて「登り山」でございます。私は山から下りまして、とりあえず仕事がございませんので、登り山における翁山特有の儀式を写真に収めることを思いつきました。

さて、自町を出発する時は、ご覧のように見送り幕は「曼荼羅」と呼ばれる、国指定重要文化財の見送り幕「外国兵隊の図」の切れ端をつなぎ合わせたと言われているものを使用いたします。二送と通称されておりますが、これはこれで市の文化財に指定されております。

大手門のアーケード手前
大手門通りと博物館通りが交わる「一八屋辻」にて90度回転し、進路を八幡宮の方向にとります。

そして、ここで見送り幕を「二送」から「一送」に交換いたします。これこそが、他町にはない翁山特有の儀式でございます。写真の質は悪いですが、とくとご覧下されや。

まず、2名の中老さんが2階に上り、固定されたロープをはずし、「二送」を下へ降ろします。

見送り幕を取り外すと、下幕が現われます。

4/4のブログの中でも触れました「鳳凰の図」の見送り下幕です。これも、この機会でないと直接目に触れることはないと思われます。

そして、「二送」は丸められ、交代に「一送」が吊られます。
下からロープを投げ
金具に固定した後、「一送」を上に引き上げて行きます。
よいしょ、よいしょ
これが「一送」です
この幕自体は、重要文化財に指定されているベルギー製の毛綴幕のレプリカ(復元品)で、平成6年に京都龍村織物によって総予算約4000万円をかけて作成されまして、翌平成7年から使用されております。

無事懸け替えが終了いたしましたところで、八幡宮に向かいまして「登り山」再開でございます。
行ってらっしゃ~い


賀祝一番の法則

テーマ:曳山・歌舞伎
昨日は、早朝から御幣迎え、その後、当翁山ではくじ取りに向けて粗宴を設ける「役席」という儀式が行なわれました。かつては、若衆だけでなく、役者、振付・太夫・三味線の三役も同席して、文字通り「役席」だったわけですが、現在では都合のつく若衆だけ、今年などは私を入れてたった11名。寂しい限りです。
ヨイサ ヨイサ
そんな若干勢いに欠ける役席の後、臨んだくじ取。今年は御旅所に全山が揃うため、その揃った状態で上演できる四番山を各町とも狙っております。3年前に八幡宮に全基揃った時は一番山が最高くじで、見事我が町が引き当てたわけです。

そんな強運の再現を、と思ったわけですが、結果は既報の通り、3年前と全く同じくじ順。即ち、1.翁 2.常磐 3.萬歳 4.孔雀 と相成りまして、当町はまたもや一番。とてもお目出度い籤ではありますが、お旅所での芸が明るい内で提灯に灯が入らない状態で演じなければならないのが難点とされます。

私の事前予想は、1.常磐 2.孔雀 3.萬歳 4.翁だったので、3番だけが当ったことになりますが、この一つだけ当る確率というのは意外に高く、1/3です。ちなみに、前回(3年前)と同じ並びとなる確率は、1/24となるんですかね。

なぜ、当町が一番くじとなったかという理由付けにつきましては、今回は「賀祝さん一番の法則」で説明いたしたいと存じます。当町で三味線を弾きます私の同級生、豊澤賀祝さんは鮮魚販売を営みながら、永年三味線奏者として曳山祭に出場し、現在では三役修業塾の塾長も務めておられます。

その彼は、当翁山以外では、ご自身のお店がある祝町組鳳凰山さん、そして北町組青海山さんで三味線奏者として例年出場されておられるわけですが、何と4年連続一番くじとなりました。三番叟の三味線を弾く高校生のS君は賀祝さんの愛弟子で賀祝二世として将来を嘱望されております。

そういえば、4年前から賀祝さんが教えた中高生が本番で三番叟の三味線を弾くようになりました。そういったことも考慮した神様のお計らいでしょうか。いずれにせよ、三番叟は小右衛門さんのご子息にお世話になります。よろしくお願い申し上げます。

たしなみ

テーマ:曳山・歌舞伎
今年、わが翁山が演じます「引窓」という芝居の中で、役人を拝命した義理の息子が持つ罪人手配の絵姿を見て、それが自分の実の息子であると知った母親が、「その絵姿を売ってくれ」と懇望する場面が出て参ります。

お芝居は実際に見て楽しんでいただくとして、その場面で絵姿の代償として手箱に隠しおいたお金を母親が取り出すところに、

♪母は手箱にたしなみし、金一包み取り出だし 
という浄瑠璃がつけられております。(曳山芝居では時間や場所の制約でセリフや浄瑠璃がカットされますので、「母は手箱にたしなみし」の部分は割愛されています。)

さて、この「たしなむ」という言葉ですが、漢字で書くと「嗜む」でして、通常この言葉を聞くと「好んで親しむ。愛好する」という意味が咄嗟に浮かんで参ります。すなわち、「酒を嗜む」とか「三味線を嗜む」などなど。

では、先程の浄瑠璃。手箱に「たしなむ」のは「お金」ですね。確かにお金を好んで親しむ方は多いわけですが、何かちょっと様子が違いますよね。この場合の「たしなむ」は「普段から用意しておく」とか「心掛ける」という意味で使われているようです。何かごとに備えたお金ということですね。

だれですか?「私も引き出しの中に少々のお小遣いをたしなんでおりますのよ、ホホホホ」なんて言っている人は。それはへそくりでしょ。ちなみに、「へそくり」の「へそ」は「臍」ではなく「綜麻」と書きまして、糸を巻く苧環(おだまき)のことで、「綜麻を繰って貯めたお金」が「へそくり」だそうです。

こういう意味で「嗜む」という言葉は普段あまり使わないような気がしますが、実はよく使っているのが「身だしなみ」という言葉。服装への心がけで「身嗜み」と書くんだな、と改めて気がつくわけですが、「見出し並み」あるいは「身出し並」と頭の中で勘違いしている人、結構いるんじゃないでしょうか。

浄瑠璃は、普段あまり使われなくなった美しい日本語の宝庫だとつくづく感じます。身嗜みだけでなく、言葉の嗜みにも普段から気をつけたいものですね。

サクラの誼(よしみ)

テーマ:曳山・歌舞伎
昨日のブログに対し、記事テーマとは全く関わりの無い、「C新聞に写真が掲載されているのを見た」というコメントを多数頂戴いたしました。

私自身、昨日はその記事を目にすることはなかったのですが、先ほど大通寺の御朝事にお参りした母が、知人の方から頂戴してきた切抜きを拝見いたしました。なるほど、なるほど、どかんと強烈な写真が出ておりますな~。ちなみに、掲載の経過はこういうことでござりまする。まあ、聞いて下されや。(油屋!と大向こう)

先週の木曜日、夜の稽古が終わるか終わらないかくらいに、新聞記者らしき女性が稽古場に入って来られまして、何かこちらに視線を送ってこられますので、「何ですか?」とお尋ねいたしますと、「あの~、私こういうものですが」と名刺を渡されます。

この名刺をいただくのは、今回が初めてではありません。忘れもしない昨年の夏、あの市役所前で私に熱中症の警告板に見入る「サクラ」を依頼した彼女です。そこで、「私のこと覚えてますか?ほらミストシャワーの」と聞きますと、「あ~あ~あ~、あの時の!」

で、結局、私が初めて太夫として曳山祭に出場するということで取材をさせてほしい、というのが訪問の趣旨でございました。実はちょっと前にY新聞さんからも取材の依頼があったのですが、ちょっとおこがましいので勘弁して欲しい、とお断りいたしました。

その経緯を伝えて、「Yさんを断って、Cさんだけというわけにはいきませんので」と申しますと、「いや、祭りに関わる大勢の方を取材する中の一人としてですので、そんな大した記事では...」とおっしゃいますので、まあ「サクラ」の誼もあることだし、とお受けいたしました。

結構、つまびらかに色々なことをインタビューされたんですが、記事的には「仕事の合間も稽古に励んできた」ということだけでしたね(笑)。にもかかわらずこの反響。やはり写真というものは恐いですなあ。活字の何倍ものインパクトなんでしょうね。

皆様から「貫禄ありますね」というコメントを頂戴いたしましたが、私の妻は見るなり「太ってるな~」の一言。妻よ、汝は正直なり。

芸は一番、パンフは何番

テーマ:曳山・歌舞伎
2年前にも同じような内容で書いた気がしますが、とにかく祭は自町での積立金と行政からの補助金だけでは賄いきれませんので、各町ともパンフレットを発行して、さまざまな企業から広告料として協賛金を集め、発刊費との差額を祭の運営費に回します。

ということで、各町のパンフレットが出揃いましたので、順に紹介いたしましょう。そうですね、紹介順は私が予想する今回のくじ順でいきましょうか。

まずは、「時平の七笑」を演じる呉服町常磐山さん、こちらを一番山として予想いたしました。このお芝居、大歌舞伎でも最初に演じられることが多く、内容的にも最も一番にふさわしいと思われます。パンフレットは黒地で、表は歌舞伎の隈取、裏は同町の見送り幕がデザインされております。

前半が記事、後半はすべて広告と完全に分かれております。常磐山さん、以前はいろいろと引用記事をふんだんに掲載されていたのですが、今回はオーソドックス。振付さんご自身が1ページにわたって見所を書いておられるのと、4町のうち唯一新市長のご挨拶文が掲載されているのが特徴です。

さて、二番山はと...。「忠七」の神戸町孔雀山さんにいたしましょうか。ここのパンフレットの特徴は、まず他の3町がB5サイズであるのに対し、唯一A4サイズであること。おそらく全町の中で最も早くA4サイズにされたのではないでしょうか。そして、表紙の錦絵。これもずっと伝統的にこのパターンを踏襲されております。

さらに同町は、ねむりはかせというプロ級、いやプロ以上のデザイナーがいらっしゃいますので、けろっぴさん等の協力を得ながら、構成も外部業者に頼らずすべて自力で行なっておられます(最終印刷のみ外注)。従って経費がかからない分、広告数も少なくページ数も他町の半分程度です。今回は昨年亡くなられた、前回までの振付師である市川松尾師への追悼文が掲載されておりました。

次に三番山ですが、私自身は多分自分のところが3番だろうと思っているのですが、まあ諸事情から「男の花道」の瀬田町萬歳楼さんにしておきましょう。こちらも黒地でございまして、表には3年前に八幡宮に12基が勢揃いした時の写真が掲載されております。

中を見て見ますと、お~~っ!カラー写真が満載でございます。とってもお金がかかっているような気がいたします。それと台本が掲載されておりますので、どういうように芝居が展開されていくのかがよくわかります。観劇の一助にもなるかもしれませんね。

え~、最後四番山が「引窓」を演じますわが伊部町翁山でございます。ご覧の通り、うちも黒でございます。引窓の浄瑠璃の中に「く~~、ら~~、あ~ぁ、あっ、あっ、あっ、あ、あああ、あああ、き~~いっ」というのがありますが、その通り真っ黒でございます。わずかに星も出ております。塵ではありませんので払わないように。

他町に比べますと、一般的な情報以外の特別記事が多いことと、広告が集中せずに全般的にちらばっているのが我が町の伝統的な特徴でございます。NHK葛西アナウンサーの著作「名セリフの力」からの引用、あるいは拙ブログ「じんとにっく」からの引用もございますので、読み物好きの方にはお奨めです。

それと、先般「み~な」最新号が出ました。「曳山まつり特集」ですので、こちらも併せてご講読いただきますと、祭が10倍、いや100倍、いやどれ位かわからんばい、くらいに楽しくなると思いますので、是非。

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