「去る」と「来い」

テーマ:曳山・歌舞伎
昨日は曳山博物館の展示曳山を入替える交替式。今年出番の四基が博物館を去り、代わりに来年度出番の山が入って来るわけです。私、この大切な時期に風邪を召しまして、筆頭さんから「油甚さんは山曳きはせんといて下さい」と温情と叱咤の相交じったお言葉を頂戴いたしまして、稽古場で控えておりました。

さて、長浜の曳山。それぞれの山組の共通点は「自分の町の山が一番最高」と一様に思っていることであり、実際それは真実なんだと思います。どこの山にも他の町には見られない優れた部分を必ず持っているからです。

私どもの「翁山」に関して言えば、懸装品つまり幕類については、品質・デザイン・量、どれを取っても他町の追随を許しません。

まず、見送り幕は国指定の重要文化財となっているベルギー製の毛綴れ織①と、その劣化防止のために作成されたレプリカ②、さらに①の端切れをつなぎ合わせて作ったとされる市指定文化財の二送
 ② ③ 

胴幕は紺ラシャに刺繍の「唐獅子牡丹図」で、これと同じ風合いで「鳳凰の図」柄の見送幕下幕というのもございます。上記の見送り幕の内側に掛ける幕で、他町でこの下幕を有するところはないと思われます。

そして、面幕(つらまく)すなわち正面に掲げる幕が「松樹上に猿の図」と「鯉の滝登りの図」。八幡宮の神前入りの時などに所謂「正装」をする場合は、この二つの幕を同時に掲げます。(向かって左が鯉、右が猿)

平成10年の祭で私は舞台後見とパンフレット委員を務めたのですが、その際にこの二つの幕をパンフレットの表と裏のデザインに採用いたしました。
 裏
さて、狂言執行時、あるいは巡行時など平装の場合は、向かって左側に臆病口幕として一枚だけ掲げます。「鯉」もしくは「猿」のどちらかを掲げるわけですが、「鯉」のケースがほとんどです。

「猿」の方は、本物の猿の毛が植えられていると伝えられており、これの消耗を防ぐ為に「猿」の使用はなるだけ控えられている、のだと私は理解しておりましたし、それも大きな要因であることは恐らく間違いないと思われます。

先日、町内でこの話をしておりましたら、ある先輩が、「『猿』を吊るとお客さんが『去る』から掛けやーれんのや」とおっしゃいまして、目からウロコ、なるほど『鯉』の方は「客よ『来い』」というわけですね。質・量だけでなく、我が町の幕は洒落心まで超一流でございます。



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