たしなみ

テーマ:曳山・歌舞伎
今年、わが翁山が演じます「引窓」という芝居の中で、役人を拝命した義理の息子が持つ罪人手配の絵姿を見て、それが自分の実の息子であると知った母親が、「その絵姿を売ってくれ」と懇望する場面が出て参ります。

お芝居は実際に見て楽しんでいただくとして、その場面で絵姿の代償として手箱に隠しおいたお金を母親が取り出すところに、

♪母は手箱にたしなみし、金一包み取り出だし 
という浄瑠璃がつけられております。(曳山芝居では時間や場所の制約でセリフや浄瑠璃がカットされますので、「母は手箱にたしなみし」の部分は割愛されています。)

さて、この「たしなむ」という言葉ですが、漢字で書くと「嗜む」でして、通常この言葉を聞くと「好んで親しむ。愛好する」という意味が咄嗟に浮かんで参ります。すなわち、「酒を嗜む」とか「三味線を嗜む」などなど。

では、先程の浄瑠璃。手箱に「たしなむ」のは「お金」ですね。確かにお金を好んで親しむ方は多いわけですが、何かちょっと様子が違いますよね。この場合の「たしなむ」は「普段から用意しておく」とか「心掛ける」という意味で使われているようです。何かごとに備えたお金ということですね。

だれですか?「私も引き出しの中に少々のお小遣いをたしなんでおりますのよ、ホホホホ」なんて言っている人は。それはへそくりでしょ。ちなみに、「へそくり」の「へそ」は「臍」ではなく「綜麻」と書きまして、糸を巻く苧環(おだまき)のことで、「綜麻を繰って貯めたお金」が「へそくり」だそうです。

こういう意味で「嗜む」という言葉は普段あまり使わないような気がしますが、実はよく使っているのが「身だしなみ」という言葉。服装への心がけで「身嗜み」と書くんだな、と改めて気がつくわけですが、「見出し並み」あるいは「身出し並」と頭の中で勘違いしている人、結構いるんじゃないでしょうか。

浄瑠璃は、普段あまり使われなくなった美しい日本語の宝庫だとつくづく感じます。身嗜みだけでなく、言葉の嗜みにも普段から気をつけたいものですね。

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