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羊腸たる

テーマ:言葉・漢字
ソーセージを時々食べるんですが、あれって別名腸詰というだけあって、動物の腸にひき肉などを詰めるわけですよね。で、詰める腸の種類によってソーセージの名前が違うって知ってました?

すなわち、羊の腸に詰めるのがウィンナーソーセージ(太さ20㎜未満)、豚の腸に詰めるのがフランクフルトソーセージ(20㎜~36㎜)、牛の腸に詰めるのがボロニアソーセージ(36㎜以上)なんだとか。

たまたま今年はひつじ年ですが、その羊の腸を使った「羊腸たる」という表現法があることを、何年か前に永井荷風の「あめりか物語」を読んでいて知りました。

「羊腸たる小道」とあり、意味は考えるまでもなくすぐ分かったのですが、そういえば、ぐねぐねと曲りくねった道を表すのに簡潔でふさわしい表現というのはあまりないような気がしますね。

英語のジグザグってのはもっと直線的だし、ワインディング(winding)というのも気取り過ぎ。「羊腸たる」の類語を探ってみると、「蜿蜒たる」「蜿蜿たる」「蜒蜒たる」など要するに「蜿」と「蜒」の組み合わせで出来た表現しか出てきません。

「蜿」も「蜒」も蛇がうねりながら行く様を表した字だそうですが、ニュアンスはわかるけれども、どうも見た目も気持ち悪くて落ち着かないし、こんな言い方は普段お目にかかりませんよね。

その点「羊腸たる」というのは、もちろん羊の腹を割いてその腸の様子を見たいとは思わないが、何となく詩的な感じがして思わず使ってみたくなる表現です。辞書には「羊腸たる山路」という用例が書かれていました。何かどなたかの人生みたいですな(笑)。

風靡

テーマ:言葉・漢字
「液晶テレビで一世を風靡したシャープはどこへ行くのだろうか」という問いかけで始まった昨日の日経新聞の社説。シャープの先行きはともかく、気になったのは「風靡」という言葉。

「一世を風靡する」は、よく聞く言葉ですね。「その時代の人々がことごとく受け入れ従うようにする。ある時代に圧倒的に流行する」という意味が辞書に書いてあります。

しかし「風靡」とは一体どういうことなのか?これは、風が草木を靡かせる(なびかせる)ように、多くのものをなびき従わせることから生まれた語だそうな。へぇ~っ、「なびく」ってこんな字書くんですね。

こんな字と言っても、このフォントでは小さすぎてようわからんのでちょっと拡大してみましょうか。
  →「麻」+「非」ですね

麻は風でしなやかになびくんでしょうかね。「靡く」という言葉は「風や水の勢いにしたがってゆらめくように動く」という意味意外に「他の威力に屈して服従する」という意味がありますね。

「いくら口説いてもなびかない」とかね。で、面白いことに「なびく」は「女性が男性に言い寄られて承知する」ことなんだそうです。なびくのはあくまでも女性なわけ。

これは言い寄るのは男だという固定観念があるからなのか、女性に言い寄られてその気になる男性に「なびく」という言葉がふさわしくないからなのかよくわかりませんが、興味のあるところです。

話変わりますが、ちょっと前にえごま油ブームだと書きましたが、一昨日ひと月ぶりに2ケース入荷したと思いきや、従前の予約分と店頭販売で瞬く間に無くなってしまいました。まさにえごま油、一世を風靡しております。



貴翰拝誦

テーマ:言葉・漢字
4/20の毎日新聞の「週刊漢字 読めますか?」の中に出されていた「貴翰拝誦」なる言葉。読むことも意味もわからなかったのですが、これで「きかんはいしょう」と読み、「お手紙をお読みしました」という意味だそうな。

返書の冒頭に使うもので、太宰治の書簡小説「虚構の春」で、太宰宛ての「井伏鱒二の手紙」の初めに出てくる、と解説されていました。

なるほど、手紙やはがきを頂いて返事を書く際に、単に「拝復」と書いたり「お手紙(お葉書)ありがたく頂戴いたしました」と書くことはありますが、こんなかっちょいい用語があるんですね。

「貴翰」は「貴簡」とも書く、とありましたが、「簡」とは「中国で紙の発明以前に文字を記した竹や木の札」のことだったんですね。ここから転じて、書簡という意味になったようです。ちなみに文字を書いた竹札や木札をひもでとじると一枚ずつ間があくので「竹+間」で「簡」というそうな。

一方「翰」の方は、「幹」に似ておりますが「羽」という字が含まれていることからなるほどと納得するんですが、これ「羽毛でつくった筆」を意味するんですね。そこから転じて文章や手紙を意味するようになったらしい。

ま、竹や木の札である「簡」よりも「翰」の方が何となく格好いいし、あまり見慣れない字でもあるし、小説家としては使いたくなるところでしょうね。今度いっぺん使てみたろ。てか、メールの普及で最近手紙や葉書はあまりもらわなくなりましたな。

のるかそるか

テーマ:言葉・漢字
先日NHKドラマ「64」を見ていた時、妻が「のるかそるかだな」というセリフに反応いたしまして、「『のるかそるか』ってそもそも何でそういう風にいうんやろね?それに『そるか』ってどういう意味なのかな?」と。

珍しくドラマに熱中していた私は、うろ返事で「ん?『そる』は『反る』やろ」「そうか、馬に乗るか、嫌がって体を反らすか、ってことか」と妙に納得する妻。

するとGWで帰省していた娘がすかさずスマホで調べて、「へぇ~『のるか』は「乗る」じゃなくて「伸ばす」っていう字を書くんやてぇ~」と。娘が読み上げた解説によると

「伸る(のる)」は「真っ直ぐ伸びる」で、「反る(そる)」は「後ろに曲がる」という意味。元々「のため型」と呼ばれるものに入れて竹を乾燥させる、矢師の矢作りに由来。

型から取り出した矢が真っ直ぐに伸びていたら矢として使えるが、少しでも曲がっていたら使い物にならず捨てるしかない。矢師が「のるかそるか」と成否を気にしながら竹を取り出したことから生まれた言葉だそうな。

これを聞いて高校時代を思い出しました。アーチェリーをやっておりまして、的を外すと矢が曲がるわけですが、これを元に修正する機械のようなものがございました。しかし曲がりがひどいと真っ直ぐに戻らず矢は使い物にならなくなる、まさに「のるかそるか」の状況。矢がまた高かったのよ。

しかし、「反る」はともかく「のる」は「乗る」しか思い浮かばなかった私。毛深い人が化粧をする前にそのままでも「(化粧が)乗るか」それとも「剃るか」と迷う、「のるかそるか」珍説を考えているうちにドラマの筋を見失ってしまいました。

一揖

テーマ:言葉・漢字
ある小説を読んでおりましたら、「〇〇は起立して、一揖(いちゆう)した」という文に出くわしました。ほぉ~、一揖とは初めて聞いた。まあ、前後の文脈から多分お辞儀をしたんだろうと想像したのですが、では一礼とどう違うのか?

神社での参拝の際に「二礼二拍手一礼」あるいは「二拝二拍手一拝」という作法があることはご存知だと思いますが、この「礼」「拝」「揖」などは神社祭式特有の専門用語だそうな。

まず「拝」とは腰を90度折り曲げる最も丁寧なお辞儀のことで、「揖」とはそれに次ぐ丁寧なお辞儀で、腰を45度の角度で曲げる「深揖」(しんゆう)と、腰を15度の角度で曲げる「小揖」(しょうゆう)との二種があるとのこと。

さらに「礼」とは「拝」や「揖」の総称なんですね。私の場合、とても90度に曲げるようなお辞儀はしておりませんで、せいぜい深揖レベルですね。

辞書によれば「揖」の元来の意味は、① 笏(しゃく)を持ち、上体をやや前に傾けてする礼。② 中国の昔の礼の一。両手を胸の前で組み、これを上下したり前にすすめたりする礼。のようでして若干意味が異なってきておりますね。

「揖」という字はむしろ「揖斐川」とか「揖保乃糸」の印象が強いのですが、旁の「口+耳」は「耳と目をくっつける」という意で、手偏が加わると両手を胸の前でくっつけるという意味になるようです。

さて冒頭の小説ですが、その後に「〇〇はソファから腰をあげて、もう一度低頭した」とあり、最後に「〇〇は三度目のお辞儀をした」という表現がありました。登場人物の〇〇は明らかに三回「礼」をしたわけですが、作者は意図的に「一揖」「低頭」「お辞儀」と書き分けたのでしょう。

今日はお多賀さんへの朔日参り。礼の角度を意識しながらお詣りして来たいと思います。
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