堪えかねたる

テーマ:曳山・歌舞伎
先ほど御幣返しから帰って参りました。まだ稽古場撤収、役者後宴等が残っておりますが、公式行事としての曳山祭は御幣返しを以ってすべて終了いたしました。

私自身、若衆の立場を維持しながら、初の太夫出場ということでどうなるかと思いましたが、皆様方のお支えで何とか務めを果たし終えることができました。この場をお借りいたしまして感謝申し上げます。ありがとうございました。

さて、祭を執行していく中では、数々の事柄に「堪える」いや堪えなければならない状況に遭遇いたします。ところで皆さん、「堪える」と書いて何とお読みになります?「どじんえる」ではないですよ。「こたえる」?「こらえる」?そうです、どちらも正解です。

たびたび歌舞伎の話で恐縮ですが、今年演じた「引窓」という芝居の中で、「♪堪えかねたる長五郎、表を指して駆け出だすを」という浄瑠璃が出てまいりました。要するに、隠れていた長五郎さんが我慢できなくなって外へ出てきちゃう、という場面なわけです。

この場合「堪えかねたる」を「こたえ」と言うべきか、「こらえ」と言うべきかを悩みました。大歌舞伎のテープなどを聞きますと、どれも「こたえかねたる」と聞こえるのですが、「歌舞伎台本選集」を見ますと、はっきりと「こらえ」という読み仮名が打ってあります。

「こらえる」というのは、辛抱する意味でよく使いますが、「こたえる」というとどうでしょうか?辞書で「こたえる」と調べますと、「耐える、こらえる、我慢する」とありますから、「こらえる」と同義と考えてもよいですね。

しかし現在では、むしろ「堪えられない(こたえられない)」と否定形で使うことが多いですよね。この場合は、「この上なくすばらしく、この状態をずっと続けたい気持ちである」という意味になりますから、話は複雑になります。

こういった諸事情を勘案いたしまして、見物のお客様により状況を理解しやすいようにと思いまして、私は「こらえかねたる」と言うことにいたしました。もっともそんなことは誰もお気になさらないかもしれませんけどね。

それにしても今年の祭は、裸参りから今朝の御幣返しまで、すっきりとした天気がなく季節はずれの寒さと雨で、まさに「堪えかねたる」気候でしたね。誰のせい?それはちょっと「こたえかねます」。

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