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獲麟

テーマ:言葉・漢字
自分自身ブログを書き始める前に愛読していたブログが二つありました。一つはメイさんの「北近江あわあわ記」なんですが、もう一方のブログを先日たまたま開きましたら「脱稿」というタイトルで、そのブログの終焉を告げる内容が書かれていました。

事情はよくわかりませんが、ちょっと残念です。とは言うものの、まあ最近全然読んでいなかったんですけど。それにしても「脱稿」とは。「だっこう」と聞くとついお尻の病気を思い浮かべてしまう私は不謹慎。

ちなみに脱稿を辞書で引きますと「原稿を書き終えること」とあり、用例として「長編小説をーする」が書かれていました。ま、これくらい長期で書かれたブログもそうないでしょうし、まさに長編小説と言ってもよしでしょう。

さて、以前に筒井康隆さんかだれかが、もう小説は書かないと宣言されましたが、あれは確か「絶筆」でしたね。筆を置くとも言いますが、「筆を絶つ」となるとより強烈なイメージがいたします。

これの類語で「擱筆(かくひつ)」という言葉があることを知りました。「筆を置いて書くことをやめること。文章をおえること」という意味で、「連載小説は今回をもってーすることとする」というのが用例に。

「擱」は「擱く(おく)」つまり「置く」や「措く」と同義ですから「擱筆」は文字通り「筆をおく」ということなのですが、一見意味がわからない分、何となく高尚なイメージがあり、ちょっと使ってみたくなります。

しかし、世の中さらに上手な言葉があるんですね。それが「獲麟(かくりん)」。麟とは麒麟のことで、孔子がその著「春秋」の「西に狩りして麟を獲たり」の句で筆を絶って死んだところから、「獲麟」は絶筆を意味するんだそうな。

麒麟というのは太平の世に出現すると云われていたのに、太平というのには縁遠い時代に麒麟が現れた上、捕まえた人々がその神聖なはずの姿を不気味だとして恐れをなすという異常事態に、孔子は自分が今までやってきたことは何だったのかというやり切れなさから春秋を絶筆したのだとか。

先の脱稿されたブログの筆者も、もしかして気分的には「獲麟」的なやるせなさからであったのではないかと僭越ながら推量するわけで、いつかどこかで再び筆を執られんことを祈ります。コブログでどうでっか?

大和言葉

テーマ:言葉・漢字
新聞の下1/3くらいのスペースに出版社の広告がよく出ておりますが、その中で先日「日本の大和言葉を美しく話す」という本の宣伝が目に入りました。

日本のでない大和言葉があるんかいな、という突っ込みはともかくも、「大和言葉で言えますか?」という質問があって次のような例題が書かれていました。

<漢語>            <大和言葉>
①遠慮なく    →      ◯◯◯置きなく
②残念ながら  →      ◯◯む◯◯は
③一生懸命   →      ◯まず◯◯まず
④毎日      →      ◯◯な◯◯な

◯の中に適当な字を入れて、左側の漢語と同じ意味の大和言葉を作れってことなんでしょうけど、正解はどこにも書いてありませんでした。ちょっと考えてみましょうかね。

まず①番目は、「こころ置きなく」でしょうかね。

②番目は何でしょうね?「あらむずいは」?ちゃうなぁ。残念ながら「くさむしりは」つらい、でもないし。あ、「惜しむらくは」か

③番目は何だ?「飲まず食わず」は一文字足らないし、「なまずまずまず」って食ったことないし。「つまずくいまず」→高島市の市役所問題か?って全然一生懸命と関係ないじゃん。待てよ、これは「うまずたゆまず(倦まず弛まず)」かな?

④番目は毎日かぁ。「飲むな食うな」って毎日言われてたりして。「おつなだんな」、これは毎日いっしょにいてもいいかもね。「ひまなおんな」て誰のことや。「へんなおとな」ってのも有りですな。「すきなさかな」、これは毎日食ってもいいな。

「そんなこんな」で毎日過ごしておりますが、これは「あさなゆうな(朝な夕な)」でしょうね。皆様からの珍回答お待ちしております。

丁寧語と親しみ

テーマ:言葉・漢字
3/23の朝日新聞夕刊の「※食べられません」というコラムで西加奈子さんが「親しみ」という題で書いておられたのですが、よく返信ハガキなどで、名前を書くところは「ご芳名」、住所のところは「ご住所」、電話番号は「お電話番号」と丁寧な書き方をされていますよね。

で、これ礼儀として、「ご芳名」の「ご芳」、「ご住所」の「ご」、「お電話番号」の「お」を棒線で消して返事を出しますよね。ところが、「FAX番号」や「E-MAIL」については丁寧語はついておらず、消すところがない、と。

筆者は「お」とか「ご」がつけられるものと、そうでないものは他にもあり、「いも」や「まめ」は「お」のみならず「さん」までつけて、「おいもさん」「おまめさん」と言うのに、「ごま」や「かぼちゃ」は呼び捨て。この線引きは何なのか?と疑問を呈します。

丁寧に呼ばれるものは、土地になじみがあったり、皆に愛されているものだと聞く、とも。このあたりだと、「御坊さん」「八幡さん」「豊国さん」など。「黒壁さん」とかはまだ言わんわなぁ。

丁寧な呼び方が親しみの現れだとしたら、住所や電話はFAXやEーMAILよりも歴史が長いので、この使い方は正しいのかもと言いながら、それにしてももうFAXあたりはベテランだし、E-MAILがないと暮らしていけないのに、と筆者。

う~ん、どうなんでしょう。単に横文字だから「お」とか「ご」をつけにくいだけなんじゃないでしょうか。「おふぁっくす番号」とか「御イーメールアドレス」なんて言うと意味まで変わってしまいそうな。

ところで、「お」と「ご」の使い分けは、例外はあるものの「お」は和語に「ご」は漢語につけるということになっているそうな。あ、そうだ、FAXやE-MAILは「さん」づけするか。「御社のファックス番号さんを頂戴できますか?」とかね。

よんどころない

テーマ:言葉・漢字
新聞に「チャレンジ 語彙・読解力検定」の欄があって時々挑戦しているんですが、なかなか全問正解は難しい。さて、先日次のような問題が。

「よんどころない」という語句の用例として最も適当なものは①~⑤のどれか?

①よんどころない事情による欠席
②よんどころない貴人を乗せた車
③憤慨よんどころない表情
④わが子のよんどころない寝顔
⑤酔っぱらいのよんどころない足取り

ま、2級相当の問題ですので、正解は①だということはわかるのですが、じゃあ②~⑤は正しくはどんな語句が入るんだろう、と考えてみました。

ちなみに、「よんどころない」とは「拠所無い」もしくは「拠無い」と書き、「そうするよりしかたがない。やむをえない」という意味。

⑤は「おぼつかない」か「頼りない」でしょうか。「拠所無い」と書けば、支えが無くて今にも倒れそうな雰囲気は出てますよね。四度くらい転びそうだし、間違える人いるかもしれませんね。

④は難しいなあ。「あどけない」とか「罪のない」ですかね。これは間違えんやろ。

③は「憤懣やるかたない」」でしょうね。「憤懣(ふんまん)」とすると間違いだということがわかってしまうので、あえて「憤慨(ふんがい)」としたのかもしれません。

さて問題は②です。これは明らかに「やんごとない」が正解だと思われるのですが、むしろ「よんどころない事情」を「やんごとない事情」と間違えるケースの方が圧倒的に多いと思われます。

と偉そうに言ってしまいましたが、調べると「やんごとない」は、現代ではもっぱら「高貴である」という意味に使われますが、その原義は「よんどころない」であり、「やんごとなき用」といった古典例も多く存在するそうな。

まあ、やんごとなき事情で異なる意味が派生したんでしょうが、上記出題の語句がもし「やんごとない」だったら、正解は二つだったわけですね。

風邪を引く

テーマ:言葉・漢字
いや、実際に風邪を引いたわけではございませんのやけど、昨日のブログで、ゆうこりんさんが「ガムテープが風邪を引かないように」なんて書いておられました。思わず
そんなガムテープおらんやろ

と、突っ込みたくなりかけたんですが、いやいや風邪引く、引くわ、と思い直しました。確かに言いますよね。「お茶が風邪を引く」とか「ねりがらしが風邪を引く」とか。

要するに「空気に触れることで、湿ったり乾燥したりして品質が落ちる」ということを「風邪を引く」と表現いたします。「風邪薬が風邪を引いてしまった」なんて、ホンマに笑い話ですわな。

ところで、病気の話に戻りますが、何で風邪は「ひく」んでしょうね?他の病気はどちらかというと「かかる」ですもんね。NHKアナウンサールームのブログ「気になる日本語ことば-トクする日本語」によれば、

どうやら、物がかぜをひくのと同じように、人間のかぜも「空気に触れること」が原因と考えられていたようです。物や人間に影響を与える「悪い風」を体の中に「引き込む」ことで体を壊すと考えたので「ひく」という言い方するんですね。

現在、病名として一般流布している「風邪(かぜ)」は「フウジャ」つまり邪(よこしま)な風という意味で、病気の原因を指したんですね。悪い風は広く病気全般の原因と考えられていたようで、だから「風疹」「痛風」「中風」など風が病名についているんだとか。

言われてみると、風に長時間当たっていると風邪を引く感ありますし、昔の人がそういう風に考えたのも頷けますわ。「風邪を押して出勤する」なんていう言い方もしますが、引いたり押したり大変ですね。いやいや、押したり引いたりしなくていいようにお互いに気をつけましょう。


(追記)
そうはいうものの、おたふく風邪を「引く」と言わないのは不思議ではある

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