いずみの伝統

テーマ:よもやま話
先日、長浜西中の卒業式に寄せていただいた時、校長先生から「油甚さん、わが校ではこういう文集を今もずっと作り続けてるんですよ」とお渡しくださったのが、
これ
「あ、いずみですね。これ、まだあるんですか?」第67号とありますから、開校以来の伝統でしょう。実は私も長浜西中の卒業生なのですが、自分の学年の時の「いずみ」が残っていないのです。本当に発行したんかな?

私にとって印象的な文集「いずみ」は長姉の学年のもの。私より5歳年上ですから、もう40年以上前のものです。当時の「いずみ」は現在のものと様相を若干異にしておりまして、生徒の各賞受賞作文がいくつも掲載されておりました。その質の高さには正直驚愕いたします。

もちろん先生や保護者の指導や加筆もあったのかもしれませんが、今の中学生、いや高校生ですら、こんな文章は到底書くことができないだろうと思われるものばかり。

その中には、私の義兄(次姉の夫)の作文もあるのですが、当時、読売新聞社主催の「全国つづり方コンクール」の県審査で知事賞を獲得したにとどまらず、全国中央審査でも佳作に選ばれた作品で、題名はそのお祖母さんの呼称であった「お喜代さん」。

本当にお祖母さんに対する親しみにあふれた名文なのですが、選者である埼玉大学教授の作品評でも「中学の部ではかなり力作がそろっていたが、私は特に『お喜代はん』という祖母の生活史が、書き方が気がきいていて、ユーモラスでおもしろかった。」と最大級の賛辞が送られたようです。

残念ながら、現在の「いずみ」の内容は文集というより漫画の入った自己紹介と思い出話。確かに、こういう内容のものも卒業の思い出には必要であり、実際私たちの時はクラス単位で、原稿書きからガリ版刷りまで自分たちで行ない、それを作成したように記憶しております。

読書や作文に重点を置いた日本語教育は、かつては暗記を中心とした詰め込み教育の、そして近年ではゆとり教育によって置き去りにされてきたのではないでしょうか。西中の伝統維持に敬意を表しながら、もう一歩進めて、若者たちの文才が湧き出るような、まさに「泉」という名にふさわしい文集の復活を願いたいと私は思います。

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