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鼻毛を読む

テーマ:曳山・歌舞伎
どんなにハンサムな男性でも、いやもっと言うなら、どんな美しい女性でもそれが故に興ざめとなること必至の「鼻毛」。うっかりしてるとついチョロリということがありますから油断も隙もありません。

さて「仮名手本忠臣蔵」の三段目、いわゆる松の廊下刃傷の段で、高師直(吉良上野介)が塩冶判官(浅野内匠頭)をなじるところで、「鼻毛かな」というセリフが出てまいります。が、とても違和感があるんです、ここでの鼻毛。

そこで昔使っていた岩波古語辞典で「鼻毛」を引くと、(鼻毛が長い意から)①愚者、②女に甘いもの、とあるではありませんか。塩冶判官、ひどく罵られたもんですな。

また「神霊矢口渡」という芝居の中では、三枚目の六蔵が懸想したお舟に手玉に取られ、夫気取りで出かけて行く時に「伸びた鼻毛の橡面坊(栃麺棒)振り回してぞ出でていく」という浄瑠璃が出てまいります。

そのまま読めば、三枚目なんだから鼻毛も伸ばし放題なんだろうということになりますが、「鼻毛を伸ばす」のは「女の色香に迷いおぼれる」という別意があるんですね。つまり完全にお舟の虜になっている様を表しているわけです。

それではですね、これの意味はわかりますか?「鼻毛を読む」

これはね、逆の立場で「女が自分にほれている男を思うように操る、もてあそぶ」という意味だそうな。うわ~、こわっ。でも、居そうですねこういう女の人。

「人の顔を見て本心を読み取る」という意味で「眉を読む」という言葉もあるようですが、眉はともかく鼻毛は読まれたくないなあ。ほれ、そこのあなた。あなたも知らず知らずのうちに鼻毛を読まれているかもしれませんよ。努々手入れは怠りなく。

神霊矢口渡(翁山)
「鼻毛を伸ばす」六蔵(ちなみにうちの息子)と「鼻毛を読む」お舟
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