三島といばり

テーマ:よもやま話
近年、村上春樹氏が毎年ノーベル文学賞候補として挙がっておりますが、日本の作家で同賞を受賞したのは川端康成と大江健三郎のわずか二人。今年の正月には三島由紀夫もその候補に挙がっていたことが報道されました。

三島は川端の受賞によって事実上自らにその栄誉がもたされることが無くなったことを嘆き、それもまた自殺の一因であったという噂もありますが、三島については小説のプロットよりも比喩などの表現技法や使用される語彙の豊富さに驚愕するばかりです。

以前「春の海」という作品を読んだ時に、意味のはっきりしない聞いたこともない語句を書き上げてみたのですが、以下の通り。読み方すらままならないですね。

豪宕 倨傲 犀利 口迅 婆娑たる 点綴 折花攀柳 放恣 
昧爽 顕証 犇く 炳乎 遠出の玉がつく 朔風 嫣然 頤使 
徒爾 膂力 翹望 灝気

また「絹と明察」という小説の中で、放尿の描写が出てくるのですが情景が頭に浮かんできて思わずメモしてしまいました。

「雨の音が琺瑯引を伝わるいばりの音に混じる。いばりは徐々に細まって、力のない点滴のあとに止んだ」。これも知らなかったのですが、「いばり」というのは「尿」のことなんですね。

「いばり」を辞書で引きますと、「ゆばり」の音変化と書いてありますので、今度は「ゆばり」を見ますと何と「ゆまり」の音変化とあるではありませんか。

次いで「ゆまり」へと辞書サーフィンして行きますと、おぉ語源が書いてありました。「ゆ」は湯、「まり」は排泄する意の動詞「放る(まる)」の連用形の名詞化、と。なるほどぉ「ゆまり」→「ゆばり」→「いばり」と変化していったんですね。

年齢が上がるに従って、勢いもキレも無くなって参りまして、それこそ力のない点滴を「こぼさんといて!」と叱られる始末ですが、たまには、うるさい!と思い切り「いばりちらしたい」ものです。

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