やに下がる

テーマ:言葉・漢字
先日書いたブログ「向津具」に対して、じゃこちんさんから「油屋若気上ルって地名が京都になかったかしら?」というコメントを頂戴いたしました。

「油屋がニヤケ上がる」と仰りたかった気持ちはようわかるんですが、そんな地名ありましょかいな。しかし、私この時ふとある言葉を思い出しました。それが今日のお題の「やに下がる」。

これってどういう意味だったっけ?と調べますと、「気取ってかまえる。得意になってにやにやする」と書いてあって、類語が「にやける」と ある。この場合の「にやける」は「なよなよしている」という本来の意味ではなく、我々が通常誤って使用している「にやにやする」方の意味ですよね。

さて、「やに下がる」の原義ですが、「やにが吸い口の方へ下がるように、雁首を上げてキセルを咥える」こととあります。「町人思案橋・クイズ集」というサイトに詳しく書かれておりますが、
この絵のように
雁首をちょいと上に上げてキセルを咥えるのが、通人ぶって気取ったポーズだったんでしょうね。ちなみに、雁首を上げると

このようにヤニが下がってくるから、「やに下がる」という言葉が生まれたとか。

今はキセル(煙管)を使う人はほとんどいなくなったせいか、「やに下がる」という言葉もあまり使われなくなりました。そこで、「にやける」が本来の意味で使われなくなった代わりに、「やに下がる」に取って代わったとは考えられないでしょうか。「やに下がる」が文字通り「野に下った」わけですね。

あ、そうそう、「やに下がる」は漢字で書くと「脂下がる」。現代においては、むしろこの字が独り歩きして別の意味(脂肪が腹や尻の回りにたまる)になる可能性も否定できませんな。

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