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三日月の頃より待ちし

テーマ:よもやま話
これは、江戸のお話。俳句仲間の月見の脇をみすぼらしい男が通りかかった。お前さんも一句どうかね、と小馬鹿にされながら誘われる。渡された短冊に「三日月の」と書くと、「おいおい今夜は満月だよ、やっぱり素人はだめだなあ」と笑いが起きた

男は微笑して後を続けた。〈三日月のころから待ちし今宵(こよい)かな〉。見事な機知で一本とった男は小林一茶。・・・・・注)芭蕉の句という説もあるらしい

あれ?どこかで見たな、この文章。と思われました?そう、今朝の朝日新聞の「天声人語」の冒頭の部分。この枕の後に、今晩の皆既月食を「三日月の頃から」待っていた天文ファンも多かろう、と続けるわけですね。

この句はどこかで聞いたことがあるなぁ、と自分自身思ったのですが、今年同業者の旅行で加賀屋に行った時、バスガイドさんが確か加賀千代女が詠んだ句として紹介してたけど、インチキだったのか?

加賀千代女といえば、大通寺にも、横超院が「手をあげよ おなじ流れにすむ蛙(かわず)」と詠んだところに「日陰のわらび 腰をのしかね」と千代女が応えた、という句碑が立てられておりますが、何と言っても有名なのは「朝顔に釣瓶とられてもらい水」か。

そう言えば、その時のガイドさん、千代女の才能をあらわす例としてもう一つ紹介してくれました。ある句会で「◯△口(丸三角四角)」を句に詠み込め、という課題が出て、彼女が詠んだのが

「蚊帳(口)の角一つはずして(△)月見(◯)かな」

というもの。これも果たして本当に千代女の句だったのか怪しくなって参りましたが、いずれにしてもよく考えられてるなと感心いたします。

さて今宵はオフ会。三日月の頃から待っていた人も多かろうと思いますが、くまさんが書いておられたようにちょうど二次会が終わる頃が皆既月食の時間帯らしい。「オフ会でハメを外して月見かな」?



玉切る泣き声

テーマ:曳山・歌舞伎
歌舞伎や文楽の浄瑠璃には、女性が泣く場面が頻繁に現れます。「わ~っとばかりに泣き叫ぶ」あるいは「泣き沈む」「泣き至る」。はたまた「前後不覚に」泣いたかと思えば、「かっぱと伏して」泣いたりもする。

その中で、これは一体何なんだろう?と思うのが「わっと玉切る女の泣き声」。これねぇ、「絵本太功記十段目」という芝居で武智光秀(明智光秀)が、真柴久吉(羽柴秀吉)だと思って襖越しに槍で突いたら、それは自分のお母さんだったという場面で出てくるんですよ。

それから、「神霊矢口渡」という芝居で、頓兵衛という悪玉親父が、懸賞のかかった新田義峯が自分ところの宿に泊まっているのを察して、二階の床板に刀を突っ込んだら、それは自分の娘のお舟であった、という場面でも「上にはわっと玉切る声」という浄瑠璃が出てまいります。

いずれにしても、女性が思いがけない怖ろしいことに遭遇して上げる悲鳴のことなんでしょうね。しかし「玉切る声」とは何ぞや?ネットで「玉切る」を調べると「長いままの原木を横に切断すること」とある。「玉を切る」の「玉」って木か?木というよりむしろ金属系のイメージなんだけど。キーンという金切り声みたいな感じ。

ほんじゃ、大辞林ではどうじゃ?と見てみると、「たまぎる」→「魂消る」とあって、「たまげる」に同じ、と書いてあるではないか。なるほどね、「魂が消えるほどびっくりする」ってことね。でも、「わっと、たまげた女の泣き声」になっちゃうと、刺された槍や刀がおもちゃに思えてくるから不思議です。

「おったまたげたなぁ、もう~」じゃ芝居になりません。やっぱり、ここは当て字でも「玉切る」でないとあきませんね。し、しかし「玉切る」なんて、想像しただけでも魂消えますわ、ほんま。

家政婦のミタ

テーマ:よもやま話
妻が、「知ってるぅ?家政婦のミタの視聴率30%やてぇ~」って言うので、「うそ!知らん。そう言えばこっそり一人で見てるな、いつも」と応えつつ、どれどれと昨日10時はTVの前に腰を落ち着け観戦。

面白い恋人」がダメで、「家政婦のミタ」はええんか?という疑問はとりあえず置いといて、このドラマ面白いです。そう言えば、長期休暇中のオレンジあみさんが記事にされていましたね。

私は昨日、それこそ初めて「ミタ」のですが、これまで見ていなくても何となく筋はわかりますし、だいいち筋などわからなくても、主人公のシリアスさがかえって滑稽に感じられたり、突っ込みどころ満載。しかし、松嶋菜々子老けましたな、綺麗なりにも。

名前が三田灯(あかり)。三田明みたいですね。で、この三田灯が阿須田家を去った後に代わりに来た家政婦さんが、これまた三田でその名前が「三田タミ」。回文か!

さらに、長谷川博之演じる姉婿の阿須田恵一に思いを寄せる「うらら」さん。相武紗季が演じていましたが、間が悪いというか完全にKYやな~、と思って見ておりましたら、「うらら」の名前の由来が「何をしても裏目に出てしまう」からとか。

ミタの不思議なバッグはドラエモンのポケットのようで、昨日は確かとげ抜きが出てきた。でも「頭の良くなるものはないの?」と聞かれると、「そのようなものはございません」って素気なく答えてましたな。

ロボットのように「承知しました」と何でもこなし、料理が抜群の腕前。さらに隣家のおばはんに亭主の浮気調査を頼まれると、証拠写真を何枚も提示し、「ゴルフ場で『イヤンバンカー、君にホールインワンだ』とくだらないジョークを発していました」と表情ひとつ変えず、声色まで忠実に再現するところが、また笑える。

さすがに、灯油をかぶって自殺しそうになった時は、「やめろ!」と思う前に、職業柄、「刺激臭に耐えられるわけないやろ。子どもらも臭いし絶対近づかへんわ」、と思いながら見ていましたけど、久々に面白いドラマ。高視聴率に納得。来週が最終回だとか。再放送に期待。

お取り延べ?

テーマ:よもやま話
昨日は、父の祥月命日でごえんさんにお参りいただいたのですが、今年は報恩講も兼ねさせていただくことになりました。なんて偉そうなことを言っておりますが、我が家は仏事に関することは9割以上母任せ。

さて、私以上に仏事には疎い妻が尋ねます。

妻: お母さん、「報恩講」とか「お取越し」とか言いますけど、何が違うんですか?

私: あと、「おぶやまい」とも言うなあ

母: 報恩講は親鸞聖人のご命日の前後に1週間本山でお参りしゃあるやろ。ほんでぇ、一般の家でそれに先立ってお参りするのが「お取越し」や

妻: 本山はいつしゃ~るんですか?

母: う~んとな、11月の確か21日から1週間や

妻: あれま、ほんならうちは後からするんですね。ほういう場合は何て言うんですか?

母: お取り延べ?????


ほんまかいな。で、調べてみると確かに我が家が属する真宗大谷派(お東)は11月に本山で報恩講が営まれるが、本願寺派(お西)では親鸞聖人のご命日を新暦に換算して1月9日~16日に行われるそうな。

なので、まあお西的に言うと、とりあえず「お取越し」なんでしょうね。なお、このあたりでは「おぶやまい」という言い方もありますが、これは「御敬い」がなまったものなのだとか。それにしても、「お取り延べ」って言葉ホンマにあるんか?

その銚子

テーマ:よもやま話
忘年会の季節となって参りました。やはり冬は日本酒。「お銚子あと3本持ってきて!」とか頼みますよね。ところが、運ばれてくるのは「徳利」。徳利と銚子は同じものなのか?

日経プラス1のコラム「その違いわかりますか」で取り上げられていた「銚子と徳利」。銚子というのは元々、下の写真のように鍋形の容器に長い柄や提手が付いていたものなんですね。そうそう、お屠蘇を注ぐ容器、あれこそ「銚子」。

歌舞伎、太功記十段目で光秀の息子十次郎が出陣を前に許嫁の初菊と祝言をあげる場面があるのですが、そう言えば「♪長柄の銚子、蝶花形~」なんていう浄瑠璃が出てきます。

上記コラムによれば銚子は、鎌倉時代から江戸時代にかけて、長い柄が短くなって急須形になり、素材も鉄から磁器に変化。江戸後期には湯の中に入れて燗をつけ、そのまま出せる徳利が宴席の主流になり、お銚子1本といえば、燗徳利が運ばれて来るようになったのだそうです。

そのうち、銚子と徳利が混同されて使われるようになったんですね。でも、私のイメージで行くと、1合徳利を「お銚子」、2合以上の大きなものを「徳利」と呼んでいるような気がします。

さあ、調子が出てきたところで(いや別に出てないけど)、銚子といえば、千葉県に銚子市というところがありますね。利根川河口の町で犬吠埼があるところでしたっけ。醤油と漁業の町ですね。

あの銚子、その銚子、いい銚子、いや、あの「銚子」は地名を指すものではなく、利根川の河口を指すもので「銚子口」と呼ばれていたんだそうです。そうよ、そうなんよ、入口が狭く中に入ると広い空間が拡がる地形が、酒器の「銚子」によく似ているから、この名がつけられたのだとか。

そう言えば、昔読んだ「業界用語辞典」という本に書いてありましたわ、「利根川にする」という隠語が。意味は、「この銚子で終わりにする」だそうで。忘年会続きの皆様、健康のため早目に利根川にしてね。

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