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兼好診断(10)家は夏向きに

テーマ:よもやま話
徒然草 第五十五段

家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比(ころ)わろき住居(すまひ)は、堪へ難き事なり。

深き水は、涼しげなし。浅くて流れたる、遥かに涼し。細かなる物を見るに、遣戸(やりど)は蔀(しとみ)の間(ま)よりも明し。天井の高きは、冬寒く、灯暗し。造作は、用なき所を作りたる、見るも面白く、万(よろづ)の用にも立ちてよしとぞ、人の定め合い侍りし。



徒然草の中でも、もっとも良く引用されるものの一つ、それがこの第55段でしょう。特に最近のように夏がこれでもかとばかりに暑いと、「家の作り方は夏に適するように」と主張するこの文章の権威が一層増すというものです。

ちなみに、遣戸と蔀がこの文章に登場いたしますが、
これが遣戸で
こちらが蔀戸

さて、私どもの店の建物は築150年とも言われるほど古いんですが、この棟にある座敷の間は実に涼しく、夏でもエアコン要らず。
外から写しますと
のれんの向こうに、明るく光る中庭が望めます。さて、涼しさの秘訣は
これ床下の通気口
庭側にもこの通り
これのおかげで、空気が店と中庭の間で循環し、部屋の中が快適な温度に保たれるというわけです。15年ほど前に店を改装した時もこの通気口はそのままにしておいたのですが、同時期に改装して塞いでしまい後悔されているところもあるようです。

冬はどうなんですか、って?冬はいかなる所にも住まる、って仰ってるでしょ、兼好法師も。いや、だから灯油を売り続けてるんだと思いますわ、多分。

さくら

テーマ:言葉・漢字
「芝居などで、ただで見物するかわりに、頼まれて役者に声をかける者。転じて、露天商などの仲間で、客のふりをし、品物を褒めたり買ったりして客に買い気を起こさせる者」

これを「さくら」と称する、と辞書には定義されておりますが、語源については、「芝居小屋の『さくら』はパッと派手に景気よくやってパッと消えるところが、桜に相通ずる」というのがもっとも有力な説のようであります。

ところが、昨日の毎日新聞の「余禄」によれば、

客を装った仲間を指す「さくら」について、大正時代の「隠語輯覧(しゅうらん)」は「『作楽』の文字、一般に用ゐらるるも、『さくら』は策略より出(い)づる詞(ことば)ならんか」と記す

確かに、これは今まで聞いたことのない説ではありますが、「さくら」が「作楽」と書いたり「策略」から出たというのは、なかなか説得力がございます。「余禄」の主題は、九州電力のやらせメール事件に対する批判なのですが、まさに原子力村の体質を世にさらけ出しましたね。

策略まみれの民主党政権も原発も曲りなりにひと花咲いたんだから、桜に倣ってパッと消えた方がやはり潔い気がいたします。「今下野すること、あるいは原発をやめるのは、桜の木を切る愚行に等しい」と言う方もいるでしょうが、その勇気と決断が必要な時ではないでしょうか。

などと、そんな偉そうなことを言える立場でもございませんが、とりあえず、今回の九電さくらメールの影響で、こちらに風評被害が出ませんことをお祈り申し上げます。

でんちじん

テーマ:石油
過去に燃料電池のことを何回か書いてるんですけど、覚えてらっしゃいます?(「バッテリー組んじゃう?」と「燃料電池と如水夫婦」)

石油・ガス業界が売り出している家庭用の燃料電池を「エネファーム」というんですが、これが震災後売れ行き好調なんだそうです。エネファーム、まあエネルギーを作り出す農場(ファーム)というイメージなんでしょうけど、太陽電池などに比べるとやや目立たない存在。

昨日の朝日新聞によれば、私どもの元売であるJX(エネオス)では前年比3.5倍、大阪ガスでも1.5倍ほどの売れ行きだとか。「エコウィル」ってのも聞いたことがあると思うんですが、こちらは天然ガスを使ってガスエンジンで発電するのに対し、「エネファーム」は天然ガスから水素を取り出し、酸素と化学反応させることで電気と熱を発生。

ちなみにエネファームは家庭での消費電力の6~7割をまかなえるようです。「そんなええもん、何で普及せんかったんよ~?」とお思いでしょう。値段が高いんですよね~。300万円くらいだそうで、国の補助金を引いても200万円の出費。こりゃなかなか厳しい。

でもね、紙上でJXの荒木常務曰く、「電力不足で自宅での発電に関心が高まった。電力会社のオール電化営業が止まったことも理由」と。やっぱりね、オール電化の過剰な宣伝と低価格にみんな引っ張られちゃった、てのもあるんでしょ。(ちなみにこの荒木常務。私の日石入社時の教育担当で彦根の荒木燃料店(城の近所)が実家)

たまたま、昨日は日経でも「転換を迫られるエネルギー政策: 電源とエネルギーの分散化がカギ」という特集記事が掲載されておりましたが、将来的には「太陽電池」「燃料電池」「蓄電池」の電池3兄弟をHEMSと呼ばれる家庭内エネルギー制御システムで管理する「スマートエネルギーハウス」の普及が期待される、とありました。

今年の夏は節電で「暑ぅ~悲鳴」は必至。
こりゃ、うちも「でんちじん(ゆうこりんさん命名)」に商売変えかな。
え、「利用待てん」?
そんなら「GO!」
いやいや結局、「惨終い(さんしまい)」...かもね。

テーマ:言葉・漢字
最近、他のブロガーさんの記事でも時々目にいたします姑ネタ。嫁姑問題は古来から(?)続く永遠のテーマなのでありましょうか。

さて、2008/12/10のブログ「姑く」に書きましたように、老女が現状のままを尊び保守的であることから、「姑く」と書きまして「しばらく」と読むそうであります。それはともかく、「姑(しゅうとめ)」という字は「古い女」ってことでそのものずばりを現していますね。

一方、「姑」に対する「舅(しゅうと)」。これ、どういう字だかわかりますか?何だか「鼻」に似ていますが鼻ではない。下の部分は「男」のようですが、上の部分はワープロ文字だと判読不可能。では、拡大してみましょうか。

舅 →  →  → 

拡大すると、余計にわからなくなった気がしないでもないですが、「男」の上の字は「臼(うす)」なんですね。何で「臼男」が舅なんでしょうかね?もちをつくのが舅の役割だからでしょうか。

この「臼」という字を左右に引き離すと、「興」という字の「同」の両側の字になるのですが、その場合は「両手の姿」を現すのだそうです。では、舅の上の部分ももしかしたら両手の姿なのか?

頭頂部が「うす」くなったのを両手で隠す男。う~ん、なかなかそれらしく思えて参りましたねえ。真相はよくわかりません。ちょっと、しゅうとはんぱな結果になりましたが、失礼いたします。

おびただしい

テーマ:言葉・漢字
お中元の季節がやって参りましたが、それに限らず、親戚、知人、あるいはご近所さんから頂き物をすることがございます。うちの家内などは、そうした時に適切なお礼の言葉が浮かばず、戸惑ってしまうと申します。そこで

妻: お母さん、そういう時はどうやって言ったらいいんですか?

母: そうやなぁ、別に「結構なものを頂戴してありがとうございます」でええんちゃうか。

私: そう言えば、「お珍しいものを」とか言わ~る人あるなあ。あれも褒め言葉やろ。

母: あとな、昔おばあちゃん(私の祖母)らはな、おみやげをぎょうさんもろた時は「おびただしく頂戴しまして」て必ず言うてやったな。隣のおばあさんも、向いのおばあさんも競いあうように言うてやったわ。

妻: ほんなら、いつもおみやげたくさん買うてこんと恥ずかしかったでしょうね。

母: まあな、今はほんながんばらんでもええで


さて、この「おびただしい」、漢字で書くと「夥しい」と、果実がたくさん生ったようなありがたい字を書きますが、「語感の辞典」には次のように書かれております。

『数量や程度が甚だしい意で、やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な和語』

なるほど、やっぱり古風なんですね。しかも改まった会話。みやげのお礼言葉に最適、みたいな。ところが、用例を見ますと、<おびただしいおみやげを頂く>なんてのはありませんで、

<おびただしい人の群れ><一日中おびただしい車が行き交う>
<情けないことおびただしい><わからないことおびただしい>

と列記されたうえで、こともあろうに『多く好ましくないことに用いる』などと書かれているではありませんか。

あぁ、そう言えば「もうこんなご丁寧さんなこと、ごみょう(ご無用)さんにしとくんないな」なんておばあちゃん言ってたの思い出した。おびただしいとか、ごみょうさんとか、結局のところ、物もらって嬉しかったんかい?嬉しなかったんかい?

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