曳山外題考2012
テーマ:曳山・歌舞伎
2012/04/20 10:30
祭が終わってからこういう話をするのも何なんですが、長浜の子ども歌舞伎の特徴として、演じる芝居の実際の題名とは別に独特の外題(通常5文字もしくは7文字)をつけて、桟掛けと称する札に記して掲げる、ということが挙げられます。
平成22年常磐山外題札
祭なので、毎年神様に新しいものを捧げる必要があるため、同じ内容の芝居でも題名を変えるという工夫を行なうわけです。で、この外題というのが、その芝居のエッセンス、山組の人たちの思い、その時々の世相などが反映されており、なかなか興味深いものがあります。
今年の外題を見てみましょう。まず、1番山の高砂山。「源平涙組討(げんぺいなみだのくみうち)」。これは須磨浦での源平合戦が舞台で、熊谷直実が組討の末、平敦盛の首を討つ(実際は自分の息子の首と差し替えて敦盛を逃がす)という内容をコンパクトに現していますね。
続いて、2番山の猩々丸は「尽忠恩愛断(じんちゅうおんあいをたつ)」。これも、弁慶が生涯唯一の交わりでできた娘の首を主君義経の正妻の身代わりに差し出す、という芝居の内容を、「家族への恩愛を断って主君に忠を尽くす」という題名に託しています。
さて、外題の読み方は決まっているようで決まっていない。そして漢文のようで漢文でない。町によって振付さんが決めたり、長老が考えたり、若衆が投票で決めたり、はたまた町外の識者に頼ったりとさまざまのようです。
3番山の壽山は負担人経験者による「桟掛け会議」が召集されるそうで、ある意味最も格式の高い外題決定方式を採っている町かもしれません。それでもやはりその道に長けておられる長老の意向が忖度されることが多いようです。
で、そこで決められたのが「嘆不添情柵(そわずになげくなさけのしがらみ)」。長浜では初見参の演目。妻子を残して町人から旗本へ出世した男と妻子の身の不幸を五文字に表しています。原題は「小磯原雪柵」
4番山の鳳凰山は「山咲紅白絏(やまわらうこうはくのきずな)」。舞台は雪の降る御殿ですから、「山咲(やまわらう)」の部分は春爛漫の曳山祭の情景を詠ったものでしょうか。紅白は源義家と安部一族の争いを示し、絏(きずな)は登場人物がすべて家族であること、東北大震災の被災者への思いもこめられているのか。
最後の文字と最初の文字で「曳山」になるという遊び心もある秀逸の外題といえるかもしれませんね。外題をつけるのは俳句を詠むにも似た感覚があります。こんな高等な言葉遊びの世界があるのも曳山祭りの奥深さであり魅力でもあると思います。
平成22年常磐山外題札
祭なので、毎年神様に新しいものを捧げる必要があるため、同じ内容の芝居でも題名を変えるという工夫を行なうわけです。で、この外題というのが、その芝居のエッセンス、山組の人たちの思い、その時々の世相などが反映されており、なかなか興味深いものがあります。
今年の外題を見てみましょう。まず、1番山の高砂山。「源平涙組討(げんぺいなみだのくみうち)」。これは須磨浦での源平合戦が舞台で、熊谷直実が組討の末、平敦盛の首を討つ(実際は自分の息子の首と差し替えて敦盛を逃がす)という内容をコンパクトに現していますね。
続いて、2番山の猩々丸は「尽忠恩愛断(じんちゅうおんあいをたつ)」。これも、弁慶が生涯唯一の交わりでできた娘の首を主君義経の正妻の身代わりに差し出す、という芝居の内容を、「家族への恩愛を断って主君に忠を尽くす」という題名に託しています。
さて、外題の読み方は決まっているようで決まっていない。そして漢文のようで漢文でない。町によって振付さんが決めたり、長老が考えたり、若衆が投票で決めたり、はたまた町外の識者に頼ったりとさまざまのようです。
3番山の壽山は負担人経験者による「桟掛け会議」が召集されるそうで、ある意味最も格式の高い外題決定方式を採っている町かもしれません。それでもやはりその道に長けておられる長老の意向が忖度されることが多いようです。
で、そこで決められたのが「嘆不添情柵(そわずになげくなさけのしがらみ)」。長浜では初見参の演目。妻子を残して町人から旗本へ出世した男と妻子の身の不幸を五文字に表しています。原題は「小磯原雪柵」
4番山の鳳凰山は「山咲紅白絏(やまわらうこうはくのきずな)」。舞台は雪の降る御殿ですから、「山咲(やまわらう)」の部分は春爛漫の曳山祭の情景を詠ったものでしょうか。紅白は源義家と安部一族の争いを示し、絏(きずな)は登場人物がすべて家族であること、東北大震災の被災者への思いもこめられているのか。
最後の文字と最初の文字で「曳山」になるという遊び心もある秀逸の外題といえるかもしれませんね。外題をつけるのは俳句を詠むにも似た感覚があります。こんな高等な言葉遊びの世界があるのも曳山祭りの奥深さであり魅力でもあると思います。