道具返し

テーマ:曳山・歌舞伎
今日はいよいよ曳山祭本日(ほんび)。天気も一日良さそうですし、ご見物の皆様には子ども歌舞伎を存分に堪能して帰っていただきたく存じます。

さて、この子ども歌舞伎、曳山の亭(ちん)の上で吹かれる囃子の出笛を合図に芸が始まりますが、役者が舞台に登場する前に演奏されるお馴染みの三味線の音色。あの曲は通常「道具返し」と呼ばれております。

そもそも「道具返し」とは舞台上で場面転換する際に使われる大道具の伝統的な技術のことで、あらかじめ描かれていた背景が屋台道具のセットに折りたたまれるように隠されていて、パタパタと現れる仕組。そこから、舞台で大道具の変わり目に演奏される曲を「道具返し」と呼ぶようになったのでしょうね。

さて、松竹大歌舞伎の三味線奏者でありながら長年に渡り長浜の曳山歌舞伎にも出場された故豊沢重松師が、この「道具返し」について語られていたことを、現松竹所属の竹本葵太夫さんがご自身のブログで思い出話として次のように掲載されております。語り口もそのままで目に浮かぶようです。

「あんた曳山といって馬鹿にしたらあかんよ。そりゃなかなか本格なんじゃから…。一番山が三番叟を踏んでから芝居にかかるの。わしらの方でいう『道具返し』ね、これに入れ事をしてなんでも弾っからかす(弾きまくる)んじゃ。

もうそりゃでたらめでも何でもええから入れ撥や掛け撥をして二度と弾けんくらい賑やかに弾くと、『ほー今年のこの山はええ三味線弾きが来とるのぉー』と得心するわけ。あとは多少ヨタでも道具返しさえあざやかだとええの。

わしも祭芝居じゃから横にウイスキーを置いてちょっと引っかけとるから、そりゃ撥もよう廻るわ。あんまりやり過ぎて『シゲマツ、ええかげんにせえ!』と野次が飛ぶと『わかっとーる』と返してやるだよ。

道具返しで手見せをして、いよいよ三重で本題に入るんじゃが、これもかならず第一声は~\めでたけれー」で始まって~\ここはところも近江路や…」と長浜やその曳山の名前を詠み込んだマクラをしばらくやって、太功記や重の井なんかに入っていくの。

太夫さんはこの第一声の~\めでたけれー」で値打ちが決まるから大きな声でやるわ。」


さて、長くなりましたが、子ども歌舞伎とともに今年は各町の三味線さんの道具返しも存分にお楽しみ下さいませ。拍手喝采の上、「◯◯さんばっかり」と大向うを掛けていただければ幸いかと。

(追記)
上記葵太夫さんのブログ、ちょっとスクロールしていくと面白いものが登場するかもしれませんよ。


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