一人二役

テーマ:曳山・歌舞伎
曳山祭のために休みをとって帰省していた娘が、「鳳凰山の芝居を見たけど、かなりクオリティ高くね?全然、筋はわからんかったけど」。うん、確かにその通り、この芝居はあらすじを何回読んでも理解できないので有名。

私も稽古、14日、本日のお旅所、千秋楽と、鳳凰山の「奥州安達原袖萩祭文」は都合4回見ました。それぞれの役者が適材適所で役目をきっちり果たし、賀祝さんと80歳を超える太夫美功先生の浄瑠璃も絶品でした。

さて、歌舞伎は時に一人で二役演じるという場合がございます。曳山の場合、役者の数が足らず、やむなく端役を兼ねるというケースが多いと思いますが、わざと主役に大きな二つの役を演じさせることもあります。

今回の鳳凰山がそのケース。前半の見せ場は乞食女に成り下がった「袖萩」が両親に不孝を詫びる祭文(さいもん)を語る場面。12歳の松村君が自ら三味線を演奏いたします。随分稽古したんでしょうね。
袖萩として
後半は打って変わって、舞台を縦横無尽に動きまわる躍動的な「安倍貞任」の演技が見せ所。前半の静と後半の動が好対照を成して、テンポよく退屈すること無く場面が展開してゆきます。
安倍貞任として
で、何とこの「袖萩」と「安倍貞任」の二役を松村君が一人で演じるわけです。そして、この二人は実は芝居の中では夫婦関係。つまり夫と妻の二役を一人で演じるわけ。娘のお君を前半は母として、後半は父として抱きしめます。

全く違うタイプの二役を演じるのは並大抵のことではなかったと思います。演じる方も大変ですが、衣裳、カツラ、化粧をすっかり変えるのも大変な作業で、そこも見せ場。袖萩が一度引っ込んで、すぐに再登場するのですが、実はそこに出て来るのは松村君ではなく、何と舞台方の寺本君。
筵を頭からかぶって
着替え、化粧替えに時間がかかる対策として考えられた、主役のみならず舞台方までの一人二役。これには私もネタを明かされるまで気がつきませんでした。袖萩のセリフまで舞台方がきっちりこなしていました。

そんな事情を全く知らなかったうちの娘。「え~、一人二役なんて全然知らんかったぁ~。友達と二人で前半ですごい頑張ってた女役の子が最後全員集合の時にやあらへんかったで、途中で病気にならんたんやろかぁ、て心配してたんや」と。

今年の曳山祭も本日の御幣返しをもって無事終了。天候にも恵まれたいい祭でした。祭と仕事、家事と役者の健康管理、出番山の人たちは皆それこそ「一人二役」てんてこ舞いの1ヶ月。お疲れ様でした。

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