花眼

テーマ:よもやま話
今年は春の訪れが遅いというか何というか寒かったのですが、ようやく暖かくなってまいりました。桜の開花はちょうど曳山祭と重なりそうな気配ですね。

日本では「花」と一語で言った場合、これは通常「桜」のことを指しますが、中国には「花眼(ホァイエン)」という言葉があるらしい。さて、何という意味でしょうか?パンジーのように顔のように見える花には眼の部分もあるかもしれませんね。

そうではなくて、「花眼」というのは中国語で「老眼」のことらしい。満開の桜を見る時のようにぼんやりと見えるような雰囲気が出ていて、とてもいい表現だと思います。

玄侑宗久氏によれば、「花がよく見える眼」つまり、細部をじっと見るのではなく花の全体性を味わえるような眼を指し、また歌人の道浦母都子さんは、「人が老いて、すべてがほんのり美しく見えはじめる眼」(『花眼の記』)と表現しているそうです。

私は30代までは視力が異常に良く、すぐに老眼になるだろうと思っていたのですが、40代から視力が落ち始め今はむしろ近眼。従って幸か不幸かまだ近くが見えないという老眼の症状は出てきておりません。

いずれにせよ、若い時に見えたものが見えなくなるのは不便ではありますが、むしろ見たくないものをはっきり見る必要がないことは、それはそれで有難いことなのかもしれない、と思うようになってきました。人混みを中を歩いてもぼんやりとしか見えなければ目も疲れません。

老眼というと何か年寄り臭くってがっかりしますけど、「花眼」であれば何となく受け入れてもいいような気がしてまいります。老眼鏡も「花眼鏡」とか「花めがね」とでも言いますか。でも「鼻眼鏡」のイメージが強すぎてダメか。

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