ほるもんから焼き肉へ

テーマ:よもやま話
1/5の朝日新聞に、戦後70年間深く交わってきた日韓の食についての特集記事が掲載されていたのですが、その中に「焼き肉 拒み 受け入れた」という見出し。

「戦後日本で急成長した焼き肉は在日コリアン社会で育まれた」と書かれていましたが、私たちの子供時代に今のような焼き肉を食べた経験はありません。「ホルモン焼」という呼び名を聞いた記憶がかすかに脳裏に残っていますが、食べるに値しないもの、という響きがあったように思います。

私が初めて焼き肉を食べたのは確か高校卒業の頃か。大学合格祝に従業員さんに彦根まで食べに連れて行ってもらった覚えがあります。それでも学生時代は食べた記憶が無いし、ようやく社会人になって「こんな旨いものが世の中にあったのか」と思うようになりました。

記事には80年代に日本企業が開発した無煙ロースターが、煙くて臭いといったイメージを変え、大衆化、高級化を加速した、とありますから、私が焼き肉に抵抗なく旨いと感じた時期とちょうど一致します。

さて、「あまり意識されていないことがある。カルビは韓国語、ハツやタンは英語、ホルモンはドイツ語に由来する。ミノは日本語だ。焼き肉のメニューには多彩な文化があふれている」とも書かれていました。

なるほど、そう言われるとあまり意識したことがありませんでした。ハツはheart(心臓)でタンはtongue(舌)でしたっけ。ミノは切り口が蓑傘に似ているからだそうな。知らんかったなあ、それは。

知らんかったついでに、「ロース」というのは肉の部位を指す言葉ではなく、ロースト(roast)の「ト」が脱落したものなんですってね。つまり「ロースト(焼き肉)に適した肉」っていう意味なんだとか。

日本人の肉(牛+豚+鶏)の一人あたり消費量は、私が生まれた1960年に年間3.5kgだったのが、69年には10kg、78年に20kg、そして2013年には30kgを超えたそうです。

昔、ホルモンが「放るもん」、つまり捨てられるようなもの、が由来だと言われたのも、肉食を拒み在日コリアンを差別してきた日本人の歴史が映されていたんでしょうね。

「朝鮮半島の食と酒」(鄭大 馨/中公新書)という本に、「ホルモンは『ほるもん』ではない。朝鮮人が自ら食すものは捨てない」と書かれていました。戦後70年、日韓の間にはまだまだ「ほるもん」がいっぱい取り残されているような気がします。

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