兼好診断(13)野分

テーマ:よもやま話
この14日、15日は県内都市教育委員会の研修で大分県の別府に行く予定だったのですが、台風19号の襲来が予想され早々と中止となりました。体育の日のイベントも軒並み中止だったんでしょうね。

さて、昔は台風は「野の草を吹き分ける風」という意味で「野分(のわき)」と呼ばれていたようですが、昔の人はこの災害をどのように捉えていたのでしょうね。

徒然草 第十九段

(前略)また、野分の朝こそをかしけれ。言ひつゞくれば、みな源氏物語・枕草子などにこと古りにたれど、同じ事、また、いまさらに言はじとにもあらず。おぼしき事言はぬは腹ふくるゝわざなれば、筆にまかせつゝあぢきなきすさびにて、かつ破り捨つべきものなれば、人の見るべきにもあらず。(後略)

徒然草では、「台風一過の朝は風情がある」と言及されています。しかし野分(台風)については源氏物語や枕草子などにさかんに書かれているので、いまさらここで言わなくてもいいだろう、と兼好法師。

確かに枕草子では「野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。」に続いて、台風が去った翌日は庭が荒れているものの思いがけないところに思いがけないものがあって面白い、といった内容のことが書かれています。源氏物語には、そのものずばり「野分」の章もあるようです。

兼好法師、今さら...と言いながらも、思ったことを言わないのも腹ふくるる、つまりストレスが溜まるからやはり書かずにはいられない。ま、どうせ書いたってすぐに破り捨てるんだから人に見られることもないだろう、と言い訳をしておられます。

昔は台風の被害よりも、去った翌日の風情を楽しむ余裕があったんでしょうね。昨今の台風はそんな悠長なことを言っていられないような被害をもたらしています。ま、人間の暮らし方が変わっただけなのかもしれませんが。

それにしても台風情報は正確ですね。進歩する「野分の分野」→仮名まじり漢字回文。さて皆様、野分のまたの日、いかにお過ごしでしょうか?

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