生命保険と生涯請負

テーマ:保険・金融
サラリーマンに成り立ての20代前半、まだ保険の知識もほとんどなかった頃、よく昼休みなどにいわゆる生保のおばちゃんたちが会社に出入りして、盛んにセールスをしていたことを覚えております。

おばちゃんとは言え、多分30代中盤だったのでしょうか、よくわかりませんが、わりと魅力的な女性セールスが来られていたせいか、部署の先輩諸氏はみんな加入されておりまして、なんか私もつられて入っちゃったことを思い出します。

その頃に「生命保険」って何か名前がいやだな~、と感じておりました。どうも人間の命に値段をつけたり、死んだら金が下りる、とかそういうイメージがどうも不健全な感じがいたしました。

生命保険会社の人たちは、そういう後ろめたい商品を扱っているから、自ら前面には立たず、女性を使ってセールスをさせているに違いない、そう勘繰ったものです。

年をとり、保険の知識もついていくに従って、生命保険の重要性について理解はしていくのですが、巷間よく言われるように、これはやはり保険の名称の問題もかなりあるな、と思うわけです。つまり、「生命保険」という名前のつけ方が失敗だったのでは、と。

これは英語の life insurance を訳したものなのですが、このinsuranceという言葉に対する「保険」という訳語は1860年代に香港で発行された「英華字典」に初めて登場したんだそうです。「保険」の当初の語義は「要害に立てこもる」ということだったそうですが、中世になると「商業リスクのカバー」という意味で使われたのだとか。

日本で西洋語の訳語というと福澤諭吉先生の名前が頭に浮かびますが、諭吉さんはinsuranceを「請負(うけおい)」と訳し、life insurance つまり今の「生命保険」は「生涯請負」と名付けたようです。

「生涯保険」ならしっくりきますが、「生涯請負」となると野暮なプロポーズのセリフ(「僕をあなたの生涯請負人にして下さい」とか)に聞こえなくもないし、現代において「生涯請負に加入しませんか?」などと聞かれたら、ほぼ間違いなく「これは詐欺臭いな」と感じさせる言葉ですね。






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