浄瑠璃作者の意図

テーマ:曳山・歌舞伎
明日、岐阜県中津川の恵那神社の祭礼で奉納文楽が行なわれるのですが、何と三役修業塾に大夫と三味線の出演依頼が参りまして、米原の曳山祭出場との兼ね合いもあり、スケジュールの空いている私が大夫として出場させていただくことになりました。

素浄瑠璃は発表会等で行なっておりますが、実際に人形が伴う文楽の大夫を務めるのは初めての経験。演目は「鎌倉三代記 高綱物語の段」。フルコースでやると1時間くらいかかるようですが、上演時間の制約で前後を省いて20分程度で行ないます。

時は鎌倉時代。源頼朝亡き後の北条時政は、頼朝の遺児源頼家をないがしろにして幕府の実権を握ろうとし、佐々木高綱や和田義盛、三浦義村ら有力御家人との抗争を繰り広げ、ついには戦となっていた。

というのが、芝居の時代背景なのですが、実はこれ大坂の陣を、鎌倉時代の北条氏と御家人の抗争に置き換えたもので、徳川家康を北条時政、千姫を時姫、真田幸村を佐々木高綱、木村重成を三浦之助、豊臣秀頼を源頼家にそれぞれ当てはめているんですね。

江戸時代に徳川政権を直接批判するような芝居はご法度ですから、このように時代背景を変えていわゆる風刺劇をつくるわけですが、観衆は当然わかっているわけで、お上も民衆のガス抜きのために見て見ぬ振りをしていたのではないでしょうか。

さて私たちが演じる部分は、別人に成りすましていた佐々木高綱が正体を現し、時政を討つ計略を打ち明ける場面なのですが、最後「♪名にし負う坂本の総大将とたぐいなき」という句で段切りとなります。

でね、プロのテープとか聞いてますと、「名にし負う」「坂本」と切れるのではなくて、「名にし」でいったん切れて「負う坂本の」と言っているように聞こえます。何べん聞いても、あるいは違う大夫さんのを聞いてもそうなっています。

まあ、そんなものなのかと思っていたのですが、どうやらこれわざとそう仕組んでいるみたいなんです。つまり「負う坂」=「大坂」ということで、これが実は大坂の陣のパロディであることを暗示しているようなんです。ですので、私もこの部分は作者の意図に忠実に、気をつけて語ろうと思っているところです。



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