歯に衣着せぬ

テーマ:言葉・漢字
先日、「濡れ衣」という言葉について書きましたら、tossanから「『歯に衣着せぬ』ってのも変わった表現ですね」というコメントを頂戴いたしました。

さてこの「歯に衣着せぬ」という言葉は、よく間違って表現されることがあります。まず読み方なんですが、「歯にころも着せぬ」と読まれる方がいらっしゃいますが、これは「ころも」ではなく「きぬ」と読むのが正しい。「羽衣」は「はごろも」なんで間違えちゃうんでしょうか。

そして、もう一つ「歯に衣着せぬ」という否定形なんですが、「歯に衣着せる」というように言い間違う人、これもいらっしゃいます。ではそもそも「歯に衣着せる」ことにどういう意味があるのか?

ある方のブログによれば、「古来わが国では歯を見せて笑うのは下品とされ、『お歯黒』という習慣にも見られるように、『歯を人に見せる』ということを忌み嫌っていた」。つまり、「歯に衣」というのは本来見せたくないものをベールに包むという意味合いがあったのではないか、ということです。

「言いたいことをズバリ口に出して言えず、オブラートに包んで表現する・・・ある意味では美徳かも知れないが、狭い島国で肩寄せ合って生きていくための知恵だったのかも知れない。」と書かれておりましたが、そんな衣(ベール)も取り払ってズケズケ言っちゃうのが「歯に衣着せぬ」ということなわけですね。

ちなみに英語では「call a spade a spade(鍬を鍬と呼ぶ)」と表現するようで、同様にフランス語では「ネコをネコと呼ぶ」、イタリア語、スペイン語では「パンをパン、ワインをワインと呼ぶ」という言い方をするようです。「率直に言う」ということなんでしょうね。

また、フランス語とイタリア語には同様の意味で、日本語と同じように「歯」を使った表現があるようで、直訳するとフランス語の方は「堅い歯を持っている」、イタリア語は「歯の外で話す」という意味になるそうです。「歯の外で話す」ってのはあたかも歯の外側に口があるようで、強い口調でズケズケ言うと感じがいたします。

さて、「歯に着せる」といえば銀歯を思い浮かべますね。虫歯や歯周病で衣着せる歯がなくなってしまっては、「歯に衣着せぬ」はっきりしたもの言いもできず、もごもごになってしまいます。皆さん歯は大切にいたしましょうね。

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