暴力装置

テーマ:政治
国の中で、暴徒が暴れたり、サリン事件を起こすオウム真理教のような組織が現われた時、または反社会的勢力が武器をもって革命を企てたりした場合、国家は警察や軍隊などの組織を用いて、秩序の維持に努めますよね。

マックス・ウェーバーという著名な社会学者がおりましたが、彼は「職業としての政治」という著書の中で、国家が権力を維持するうえでの必須の手段として、この警察や軍隊などの物理的強制力を「暴力装置」と称しています。

国会で仙谷官房長官が「『暴力装置』である自衛隊は特段の政治的中立性を確保されなければならない」と言った発言が問題視され、仙谷氏は法律用語としては不適切な表現だったとして撤回、謝罪し「暴力装置」を「実力組織」と訂正いたしました。

先のマックスウェーバーの定義からすれば、自衛隊は治安を維持する組織でもありますから、当然「暴力装置」ですよね。そして、暴力装置なくして秩序を維持する事はできないが、それが個人の権利や自由を侵害しないように、議会が予算や法律で統制する。これがシビリアン・コントロールです。

さて、一方でソ連で社会主義革命を成し遂げたレーニンは、これらの組織が「革命を妨げる機構」という意味で「暴力装置」という言葉を使っているようです。

社会主義が実質的に崩壊した今、かつての左翼、右翼という考えに拘泥するのはあまり現実的ではないとは思うのですが、仙谷さんはかつてバリバリの左翼だったわけで、彼のそういう経歴を批判する人たちは、仙谷発言の裏にはレーニンが使った意味が隠されていると批判しているわけです(実際そうかもしれません)。

防衛相や農水省を歴任した自民党の石破茂政調会長は、政情や政策を非常にわかりやすい言葉で説明してくれるという意味でも非常に有能な政治家だと思いますが、彼自身も昨年3月に「警察と軍隊という『暴力装置』を合法的に所有するというのが国家の一つの定義である」と朝日新聞のシンポジウムで発言しているそうです。

昨日の日経新聞「寸言」によると前原外相は「昔よく共産党系の本も読まれていたんだろう。その中にあったやに聞いた。あくまで本音ではなく、言葉が誤まって出たと認識している」と擁護(?)したそうです。

仙谷氏の真意はどこにあったのか不明ですが、石破さんなら「マックスウェーバーは政治的に中立であるし、仙谷発言の前後の文脈からして決して誤用とは言えない。しかし、国民になじみがなく誤解を与えやすい用語を使ったことは、必ずしも適切とは言えなかった」くらいの擁護はしてくれそうな気がするけど....。

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