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だしは1年寝かします

テーマ:曳山・歌舞伎
政府が2015年のユネスコ無形文化遺産登録を目指し、全国32件の「山・鉾・屋台行事」について一括提案を決めた、というニュースは皆さんよくご存知だと思います。

この中には長浜の曳山祭も含まれており、長浜市では「登録決定近し」の来春の祭を盛り上げ、観光客誘致につなげたいと、庁内に部局横断組織「ユネスコ曳山ユニット」を発足させ、いくつかの具体的な案も出始めている、という報道もありました。

ところが、がですよ、今朝の日経新聞見たら、何と「山車祭りの審査見送り」の記事が。何でも、各国からユネスコに対して1回の審査件数の上限50件を超える61件の提案があったため、審査が2016年に先送りされるそうな。

上限を超える提案があった場合は、無形文化遺産の登録がない国や複数国による提案、登録が少ない国を優先すると決めた上で、1国当たり2年間で最低1件の審査を約束するとのこと。

ちなみに、無形文化遺産の総登録数は281件で、日本は能楽、歌舞伎、和食など22件で、30件の中国に次いで2番目に登録が多いそうです。

まあ、個人的には最近、富士山、富岡製糸場、とか有形、無形を問わずやたら遺産登録流行りで若干食傷気味なところはあります。かつて故中村勘三郎さんが「遺産指定ってのは衰退しつつあるものを保護しようってんだろ。歌舞伎は衰退なんかしねえよ」といった感じのことをおっしゃっていたことを思い出します。

いやいや、そうは言っても、上記の通り市内でも登録に向けての気運が盛り上がっているところに水を差すつもりは毛頭ありません。だし(山車、出汁)に水を差しては水臭くなりますもんね。

国民、市民を一層鼓舞(昆布)し、活を(カツオ)入れ、2016年の審査はきっとVよん(ブイヨン)。より極上のだしを得るために1年寝かすことといたしましょう。


山鉾屋台保存連合会総会

テーマ:曳山・歌舞伎
5/2、3の両日に渡り、愛知県の知立(ちりゅうし)市で「全国山・鉾・屋台保存連合会」の総会・研修会が開催され、長浜曳山文化協会のT理事長、N事務局長(曳山博物館長)、伝承委員で修理技術者のHさんと私の4人で参加して参りました。

当連合会の正会員資格は「重要有形民俗文化財又は重要無形民俗文化財の指定を受けた祭り屋台等の保存団体」ということで、現在では32会員。そう、先ごろ文化庁がユネスコの無形文化遺産への登録提案を決定したのがこの32件の行事というわけ。

昭和54年に発足時は、有形の指定を受けている、京都(祇園祭)、高山、高岡、日立、秩父の5団体で発足したようですが、その後規約改正で無形指定の祭も含められ長浜も加入し、曳山博物館が開館した平成12年には総会開催都市となっています。

年々参加者が増えているようであり、会場のキャパの関係上、懇親会は立食パーティー。私は初参加なのですが常連の方の話ではこれまではテーブルで椅子席だったそうな。しかし全員が立ちっ放しというわけではなく、来賓のテーブル3つだけは何故か椅子席。そんなの有りかよぉ~。
昔よくTVに出ていた大村愛知県知事
この日はちょうど知立まつりが行われており、懇親会後に山車の見学。長浜の囃子よりもテンポがややゆっくりめで優雅な感じの音色で巡行してきた山車が辻で回転。何と5トンもある山車の梶棒がかつぎ上げられまして、これが祭の一つの見せ場だそうです。人波でよう見えませんでしたが。


もう一つの特徴が山車文楽。日本広しといえども山車の上で文楽を行なうのはここだけとか。実は知立の太夫・三味線の指導者は長浜と同じく名古屋在住の桂川千賀龍師匠。

ちょうど演じられていた鎌倉三代記をしばし鑑賞。舞台裏に太夫・三味線さんがいらっしゃるのが見えると思いますが、長浜の場合は障子に隠れて姿が見えませんが、ここは姿が見えまして、そのせいか裃も着けておられますし、太夫の見台も置かれています。

私たちは曳山の上では歌舞伎という固定観念を持っていますが、山車の上での文楽というのも実にいいものですね。

大根の花を

テーマ:曳山・歌舞伎
曳山祭には各町に太夫、三味線が一名ずつ。青海山以外は松竹所属のプロの方や全国の地芝居や踊りで活躍されているセミプロの方たちばかり。

せっかくそんな達人たちがお見えなので、席を設けて三役修業塾の有志でお話を聞こうということになり、まず12日には月宮殿の太夫を務められた竹本美功先生に。

美功さんは80歳を過ぎておられるのですが、今なお現役で東濃を中心に活躍中。10年前に直腸がんで余命2年と宣告されながら、薬功、家族の介抱、ご自身の精神力と信仰の力で完治され、今年などは既に年末までに公演スケジュールがびっちり埋まっているそうです。

美功さんの語り口は刺々しいところが全くなく、角が取れ耳触りが非常に良いのです。私たち素人は、甲(高い音)の部分で変に力んでしまったり、乙(低音部)が下がり切らなかったり、色々と悩みを抱えているわけですが、頂いたアドバイスの要点をまとめてみると、

1.「床(太夫、三味線)は刺身のつまであることを忘れるな」: 歌舞伎の場合は主役はあくまでも役者。自分が気持ちよく語るのではなく、役者の動きの寸法に合わせて、役者を引き立てるために語り、演奏すること。

2.「音は外しても間は外すな」: 素人は節を気にする、つまり音を外さないことに気が行きがちだけれど、大事なのは間(ま)。少々音程は外れても間が合っていれば問題ない。

3.「乙(低音)は地を這うように、甲(かん:高音)は鼻に抜けるように」: 特に高音部はついガナったり、裏声に逃げたりしがちなのですが、「鼻に抜けるように」というのは、なるほど納得。

4.「役者の気持ちになって語る」: よく歌うのではなく「語る」のだと言われるのですが、確かに役者の気持ちになれば、いくら三味線の節がついていても、それにつられることなく変な訛りにもならずに語れるはず。

5.「声が小さいからこそ聞いてくれる」: やたら大声を張り上げればいいというものではない。特に本行のオクリなどは、低く小さい声でやるからこそ、お客さんも静かに耳をすまして聞いてくれる。

6.「最終的に、◯◯流と言われるようになれ」: 私たち素人は師匠やプロのテープを聞いたりして、その語り口を真似ようとするわけですが、いずれは◯◯流という自分の語りを確立すること。守破離ということなんでしょうかね。


う~ん、しかし子供歌舞伎の場合は、やっぱり刺身の「つま」と言うより、少なくとも「醤油」の役割を果たすことが必要な気がするなぁ。いや、せめて「わさび」で。といった欲がいかんのだな。大根は大根らしく大根の花を目指すか。 

高い所からではございますが

テーマ:曳山・歌舞伎
長いようで長かった、短いようで短かった曳山祭が終わりました。今年は本当に天候に恵まれましたね。関わられた皆さんの精進の賜物でしょう。

昨日は後宴ということで、11時半から文芸会館での公演。その後、午後3時、午後4時半の自町公演、そして午後7時半から千秋楽。

通常は太夫と三味線は舞台障子の裏側で語り、演奏を行なうのですが、何と千秋楽は特別に足場を組んでいただき、その上でいわゆる「出語り」をさせていただきました。
曳山の左斜め前方で
足場の高さは曳山の舞台とほぼ同じで、しかも柵がないので、ちょっと感情が高ぶってバランスを失ったら、そのまま真っ逆さまに落っこちるんではないかという恐怖に慄きながらの上演。

見台を両手でしっかりと抱えながらやっていたのですが、そのうちだんだん芝居に入り込んでしまいまして、最後は語りというより、思いきり歌ってしまいました。これでは太夫失格ですなんですけど、千秋楽に免じて許して下さいませ。

カラオケはストレスが溜まることが多いのでほとんど歌わないことにしているのですが、今回の千秋楽の浄瑠璃ではカタルシスを味わうことができました。青海山の皆さん、いいお祭りを本当にありがとうございました。お疲れ様でした。

曳山外題考2014

テーマ:曳山・歌舞伎
昨日は午前中に2本青海山の自町狂言を終え、我々は御役目御免。午後からは登り山。4番山から順に八幡宮へと向かいます。(写真は当店前を通過する一番山の青海山)

この後、3時頃まで胡麻油を瓶詰めして、私自身も八幡宮へ。目的は今年の各町の外題調べ。全山一斉に見られますし、当町の方に分かる範囲で読み方や込められた思いなども聞けますからね。
左から青春月諫の各山

(読み方はすべて推測ですが)まず、一番山の青海山は「逢時雨百千色総(あいしぐれひゃくせんいろのたづな)」。実の息子との出逢いと別れ、そして今のやるせない自分の立場を百千色の憂き涙を流して嘆く重乃井の感情を現しています。「総」は「たづな」と読むそうな。

同町は、これまで私の同級生で45年前に三吉を演じたI君のお父さんが外題を考えておられたようですが、今回は振付さんの案と自分のそれを比較検討し、振付さんの案を採用されたそうです。

二番山の春日山は「奪太刀連舞(うばうたちのつれまい)」。演目が「太刀盗人」ですから、まあ芝居の内容を直接外題にしたような感じです。見たところ、人の手によって筆で書かれたものではなく、ワープロ文字のカッティングシートに見えるのは気のせいか?

三番山の月宮殿は「雪明知烏鷺忠節(ゆきあかりしらすうろのちゅうせつ)」。芸題は「碁盤太平記」。烏鷺(うろ)は烏(からす)と鷺(さぎ)。つまり黒と白で碁盤を意味するそうな。こりゃよく考えられてるな、と思ったんですが、同劇を演じた昭和46年の翁山の外題が「雪明烏鷺眴(めくばせ)」。あるいは参考になされたか?

四番山の諫皷山は喜劇お祭提灯に取材した振付水口氏のオリジナル作品「喜有福満祭提灯」で外題は「澄心輪福富(すみしこころめぐるふくととみ)」。昨年の漢字に選ばれた「輪」を「めぐる」と読ませ、金が人の手から手に次々と移っていく芝居の内容を表したそうな。

同町は近年は元曳山博物館館長のN川氏が命名されていたようですが、今年は若衆の中でもアイデアを出し合い、結局N川さん案ではなく、若衆案が採用されたとか。町内の多くの人が外題付けに関わるというのは喜ばしいことだと思いますね。

なお、外題は5文字または7文字で構成されるのですが、青海山は年によりいろいろ、春日山は平成8年以降前回までは7文字、月宮殿はここ7回は7文字。そして諫皷山は少なくとも大正以降一貫して5文字と、町によって特徴があるようです。  
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