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さよなら松ちゃん

テーマ:油甚本店
松ちゃんと言うと、コブログでは松男さんということになるんですが、これから話す松ちゃんは本名こそ松男なんですが、コブログの松男さんでないことを最初にお断りしておきます。

一昨日の朝、スタンドの所長から電話があって、「どうも松ちゃんが亡くなったらしい」と連絡が入りました。松ちゃんは享年75歳だったのですが、昭和30年に16歳で当店に入店、結婚するまで住み込みで、その後定年過ぎまで45年以上にわたって勤務してくれました。

病気した話など聞いたこともなく、時々元気な顔を見せに来てくれていましたし、今週の月曜日には近くに住む姉の店を訪ねて15分ばかり話をしていったそうです。

しかし、その時に「油甚に勤めていたもんが皆死んで行くし、わしだけが残った」と死んだ人たちの名前を指折り言いながら、憂いの交じった笑顔を浮かべていたので、姉は嫌~な予感がしたらしいです。姉のところに寄ったのは初めてらしく、お暇乞いに来てくれたんかいな、と。

10年前に奥さんを亡くして一人で暮らしていた松ちゃん。料理も自分でできる器用な人で、最近は寺や神社の世話役をして地域に貢献していたようです。心筋梗塞で倒れていたところを、当日一緒に出かける予定だった近所の人に見つけられたそうです。

昨日葬儀に出席させていただきましたが、顔も声も若い時の松ちゃんそっくりの息子さんが、「父は本当に優しい人で叱られた記憶がありません。明るくて愉快なお父さんでした」とご挨拶。全く温厚な性格で、頼まれごとがあると「はいはい」と何でもしてくれる親切な人でした。

私がこちらに帰って来てしばらくの間、肥料の営業・配達をしてくれていましたが、一度軽トラに大量の肥料を積んで湖西の方まで一緒に配達に行って、揺れる車の中で昔のことなどを色々と話してくれたことが思い出されます。

生前に「よう大将(私の亡父)に怒られる夢見るんや」と言ってた松ちゃん。きっとまた「松ぅ~っ!はいから何こんなとこ来てるんじゃあ!」ってあの世で叱られてるんだろうな。

今年3月に亡くなった老番頭のMさんに次いで松ちゃんまでが。油甚の昔からの歴史を知る生き字引が本当に居なくなってしまいました。時代の流れといえばそれまでですが、本当に寂しすぎる年の瀬です。松ちゃん、長い間ありがとうございました。さようなら。

花火は翌日

テーマ:油甚本店
一昨日は長浜の花火大会。従って当然のことながら、昨日は花火の翌日。花火当日は教育委員会の会議があって午後は不在でしたのでよくわかりませんが、例年より本店の売上が悪い。やっぱり観光客が少ないんかなあ。

で昨日。午前中、事務員さんが用事で休まれましたので店番。まあ、平日やしお客さんも少なかろと高をくくって新聞おっぴろげて読んでたりしてたんですが、店の前に車を停めて、迷わずに1リットル入りの胡麻油を買って行って下さるお客さんが続きます。

そうか、こりゃ昨日花火を見てお泊りしてお帰りのお客様だなと想像を働かせます。いわゆる遠方からのリピーターで、こういうお客様は楽でありがたいですね。いちいち商品説明もしないでいいし、購入額も大きいですから。

そうこうしているうちに熟年プラスアルファのご婦人二人がご来店。「私、毎年ここへ寄るのよ」と。そしてお連れのお客様に「これがおいしいのよ」とか「ポン酢試食させてもらいなさいよ」とか私の代わりに商品を説明してくださるんです。

その後に入って来られた別のお客様とも親しげにお話しされているので、てっきりこの方もお友達かと思ったら、「お宅はどちらから?」「彦根なんですよ」「あら、私たちは名古屋」なんていう会話。すごいなあ、初対面でこの自然な会話はどうよ。

「昨日は花火をご覧になったんですか?」と尋ねますと、「そうなのよ。毎年〇〇さんに泊まりで来てるの」。「えっ!あそこって1年前から予約しないと取れないんですよね」「そうそう、だから昨日また来年の宿泊予約したわよ。生きてるかどうかわからないけど」

いや、生きておられますとも。それにしても、こういうお客様がいらっしゃるおかげで、ホテルも観光施設も我々小売店も少なからず恩恵を受けているとはいうものの、あな羨ましや、たまにはこういう身分になってみたいもんです。

まあ、思いの外売り上げがあった昨日。夏は夜、花火は翌日やな。

アウトと思いきやセーフ

テーマ:油甚本店
長年使っておりました手提金庫が壊れてしまいました。お札しか入ってなければいいんでしょうけど、小判がざくざく、いやいや小銭カウンターを中に入れてそこに小銭を押し込んでいるので、結構重量がかかっているんです。

持ち上げると、ストッパーが外れてお化け提灯よろしく、蓋がパッカーンと開いて中身がバサッ、ジャラジャラジャラ~ん。あ~ぁ、やってもたぁ、ってことでそろそろ寿命ですかね。

代わりの金庫を求めるべく、以前買った老舗の文房具屋さんやアヤハ、カーマなどを回りますが、どこも種類も少なく在庫もほとんど無い。そりゃ、そうそう頻繁に売れるようなもんでないですもんね。

ハタと思いつき、カウネットのカタログを広げると、ありました、ありました。今までのはA4版やったけど、B5版でもいけるんちゃうかぁ、安いしぃ、ってことで「カール」とかいうメーカーのを注文しましたら、次の日にはもう届いておりました。

早速試したのですが、うわっ、これ札の大きさギリギリやん。4種類の札を分けて収納可能という触れ込みだったのですが、2段式トレーになっていて、しかも取り外しできず、収納スペースが狭すぎでえらい使い勝手が悪いんです。

そうは言っても、使わなしゃあないし、古い金庫は捨てなあかんし。最初、不燃ごみに出そうと思ったんですが、考えてみると鉄製ですし廃缶と一緒に資源業者に持ち込めば幾ばくかのお金になることに気づき、廃缶と一緒に持って行ってもらうべく三ツ矢のスタンドへ持って行きました。

冗談で「これ、直らんやろかぁ」とスタッフのN君に言いましたら、「う~ん」と考えて「これは溶接が外れて、天板が反ったりしてますねぇ」。車にも詳しいけどそんなことまでわかるんか、と尊敬の眼差しで見つめます。そのうち、ねじを外して分解し始めます。

「まあ、好きにして適当に処分しといて」と言って別用があるのでスタンドを後にしました。数時間後本店に帰って来たら、すぐ後にスタンドの所長が来て「金庫直りましたでぇ~」「うっそぉ~!」。どうやらN君が溶接外れの部分をマーキングし、それを某鉄工所(鍛冶屋さん?)に持って行って溶接してもらったそうな。

「社長、いっぺん、小銭やら何やら入れて重くなった状態で蓋が外れんかやってみて下さいな」と所長に言われて試してみると。おぉ、大丈夫やわぁ...。てことで、ほぼ未使用のおニューの金庫は返品することに。
溶接手術を受け無事復帰
以前の金庫には愛着もあるし、名医のおかげで寿命を伸ばしてもらったような気分。アウトと思いきやセーフ。金庫(safe)だけに。鍛冶屋さん、スタンドの皆さんありがとうございました。

ケタ違いのお客さん

テーマ:油甚本店
この間店番していた時のこと。いかにも生地が良さそうな黒い作務衣を着た男のお客さんがご来店。手にはこれまた帆布風のお洒落な手提げバッグを持っていらっしゃる。

「お洒落なバッグですね~」と言いますと、「いやァ、そうでもないのよ~」。「いつも着物とか作務衣みたいな格好なさってるんですか?」「はい、そんなんばっかり着て喜んでます」とおっしゃりながら、「ええ~っと、この胡麻油を4本下さい」と瓶入りのを指さされます。

「はい、4本ですね」と言って袋に入れようとしますと、「えっと、おいくらでしたっけ?」と聞かれますので「2,200円です」と答えます。「あ、そうか、前からそんな値段でしたっけ?」とおっしゃるので、「あ~、原料代が高騰してまして6月から値上げさせてもらったんです」

残念そうな顔をなさるので、「すみません。消費税アップの時は値段据え置いたんですけど、原料代のアップがかなりきつくて」。「えっと、いくらでしたっけ?」ともう1回聞かれるので、「4本で2,200円です」。「えっ、そんなわけないよね。22,000円だよね」

一瞬耳を疑ったのですが、よくいらっしゃいますよね、実際の値段に「万円」つけたり「億円」つけて誇張していう人。この人もその類で、2,200円のことを22,000円と言うてやあるんやろと思い、「そうそう、22,000円です」と冗談で言い、財布から出されて縁台に置かれたお金を見ますと.....。

おいおい、1万円札2枚と千円札が2枚置いたるがな、ほんまに。「お客さん、2,200円ですよ」。「えっ、うそ?そんな安いの」と、万札をしまわれる財布にはたんまりと....。

「そのまま受け取ってたらわからへんかったのに」と冗談とも本気ともつかぬことをおっしゃります。確かになあ、最近お客さん少ないし、まさに干天の慈雨やったかもしれんなァ。しかし、ほんまに金銭感覚がヒト桁違う人ってやありますんやな。

夏中の店番

テーマ:油甚本店
昨日は夏中さんと日曜日が重なり、最近閑散としているわが商店街もそこそこの人出となりました。店番をしていると、よくお見かけするお顔の方が表に、と思いましたら市長さん。

目が会いましたので会釈をしますと、「やあ油甚さん、こんにちわ」とあいさつして下さいますので、もう一度最敬礼して表に出ます。

「今日は何かあったんですか?」と尋ねますと、「いや、夏中さんだからということで大通寺にお参りしようと思いましてね」と。傍らにいらっしゃる観光協会長さんの方を見て「夏中にお参りしたことあるか、と聞いたら、無いとおっしゃるんで」

「ほんまもん、お参りしませんわな~、普通」と観光協会長さん。確かに私もわざわざしませんな。「しかしこれ、露店が並んで地元の店はどう思ってやあるんですいな?」と市長さんがおっしゃるので、「賛否両論みたいですけど、商売の邪魔になる、という人もいるようですね」

「そやろな~。やめるわけにはいかんのかいな」。「いや、それはあきませんわ。夏中さんは最もたくさんの地元客が商店街に来られる行事ですし、楽しみにしている人いっぱいいますもん」。「ほうか、何が楽しいんやろね?」。「あの雰囲気だと思いますよぉ。木之本地蔵の縁日なんかでも同じでしょ」としばし夏中さん談義。

いずれにせよ、「ご殊勝なお心がけで」とお参りに行かれるお二人を見送ります。それからしばらくして、今度は数人の中年の男女の方々が夏中さんのポスターを見て、「あの、『なつなか』って書いて何と読むんですか?」と尋ねられます。

「あ、あれは『げちゅう』と読みまして、大通寺でこの期間行われる法要のことなんです」。「何か3日から6日までってアーケードで見たけど」「あ、それは、露店が並ぶ方の『夏中さん』で、お寺の夏中法要はもっと長いんですよ」

で、その後、大通寺が東本願寺の別院であることやら何やら説明して、「とにかく夏中ってのは、この梅雨時にお勉強をしましょ、ということらしいです」と申し上げますと、その中の一人の方が「じゃ、夏安居(げあんご)みたいなもんね」

「あ、それそれ、それが由来ですわ」と言いますと、舌をペロッと出して「私もちょこっと勉強しましたんで」と。頭がスキンヘッドなので「ひょっとして本職ちゃいますんかいな」と言うと、同行の女性が「そうそう、天台のお坊さんですわ」。何や、釈迦に説法かよ。

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