さわりとくどき

テーマ:曳山・歌舞伎
「この曲のさわり」を歌ってみて下さい。こう言われたら、皆さんどこを歌われます?出だしの部分?はい、そうですね。という間違いをしている人が若い人を中心に55%程度いるそうです。

実は「さわり」とは「一番の聞かせどころ」、つまり一般的に「サビ」と言われている部分のことなんですね。何で「さわり」って言うんでしょうね?元々義太夫節で義太夫節以外の他流の曲節を取り入れた部分のことで、他の節に触っているという意味だったそうです。

そこから転じて、義太夫節の中でも一番の聞き所とされる箇所を指すようになったようです。逆に「サビ」というのは謡曲・語り物において「低くて渋みのある声。枯れて渋い声」、つまり「寂声・錆声」だったわけで、「聞かせどころ」という意味では「さわり」の方が適切なんですね。

さて歌舞伎や文楽の義太夫節で、「おわさのさわり」「操のさわり」「お里のさわり」などというのが出て参ります。特に女役が慕情、哀愁などを表現する箇所を指します。同じ意味で「くどき(口説き)」という言い方もされまして、常々何が違うんだろうか?と疑問に思っておりました。

どうやら、通常「さわり」と呼ばれている部分は「くどき」というのが正しく、「さわり」というのは「くどき」の中の一部分の節を指すようです。口説きというのは「平曲で旋律的な動きが少なく語るような口調でうたう箇所」で、その中に旋律的で華やかな「さわり」の部分があるというのが正解らしい。

「口説き」の中の一部が「触り」だなんて書くと変な誤解を招きそうですが、そんなことしたら「口説き」の「障り(さわり)」となりますので気をつけましょうね。では皆さんで「さわり」を一つ、♪潮騒のメモリー 17歳は 寄せては返す 波のように 激しく~

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