團十郎さんまでが

テーマ:曳山・歌舞伎
役者というものを人柄や性格も含めて評価するとしたら、この方の右に出る歌舞伎俳優は居ない。そんな市川團十郎さんがお亡くなりになられました。昨年暮れ、勘三郎さん逝去の直後に肺炎で入院というニュースを聞いた時の嫌~な予感がこんなにも早く現実のものとなってしまうとは。

それにしても、ここ2年間で、富十郎、芝翫、雀右衛門、勘三郎、團十郎と名役者が相次いでこの世を去るとは。新歌舞伎座の杮落しを4月に控え、歌舞伎界は一体どうなってしまうのでしょうか。

2004年に発症した白血病との闘い。妹さんから受けた骨髄移植で血液型がA型からO型に変わり、治療の過程で無間地獄を体験した程ですから、もはや死を恐れるということは無かったかもしれません。それよりも気がかりは息子海老蔵のことだったのかも。

関容子さんが「海老蔵と團十郎」という本の中で書かれていましたが、團十郎さんは奔放な息子海老蔵を「強面で表面的には恐い顔をして強硬な態度に出る。それでいてパッと叩かれるとヘナヘナと結構弱いんです」と。神経質で鋭利で繊細な海老蔵に対して、大らかで大きくて包容力のある父團十郎。

團十郎さんは決して器用な役者とはいえず、鼻にかかったようなセリフは若い頃から酷評されたこともあったようですが、野原明さんが「平成の歌舞伎」という本の中で書いていた、「発声やセリフ回しも欠点を飲み込んで次第に團十郎らしさにしてしまった」というのは、その通りかもしれません。

まさに彼の途轍もない包容力が観衆をま~るく包み込んで安心感を与える、そんな役者であったように思います。演じる役者によって、登場人物の性格が変わることがあっていいのかどうかわかりませんが、團十郎さんが演じるとどんな悪役でも性根は善人、そんな風に思えるほどでした。

父である11世團十郎は「大切なのは字でいえば筆勢であって形ではない」と言ったそうです(上村以和於「21世紀の歌舞伎俳優たち」)。達筆ではないけれど、たっぷりと墨を含んで太くて大らかで、ほのぼのとした気分にしてくれる、そんな字を書き上げる役者だったような気がします。團十郎さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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