永遠のアンファンテリブル逝く

テーマ:曳山・歌舞伎
昨日の朝、新聞を読んでいたら、TVを見ていた妻が突然「え゛っ!うそぉ~~っ」と悲痛な声をあげるので、何事かと聞いてみると、「勘三郎が亡くなったんやてぇ」

ここ1年くらいの彼の健康状態や最近の週刊誌報道で、もしやと予感していたので、驚きよりもむしろ来るべき時が来てしまったか、という諦めにも似た虚しさに襲われました。生死の境をさまよいながらも復活した仁左衛門や團十郎の奇跡が彼にも起こるだろうと信じていた人は多いと思います。

57歳。若すぎる。特に歌舞伎役者は70歳を過ぎてやっと一人前と言われる世界。稀代の天才役者があと20年、30年、何をしでかし、そしてどのように枯れていくのか、みんな楽しみにしていたろうに。

生で彼の芝居を見たのは3,4回か。松竹座で見たニューヨーク公演と同じ「夏祭」、びわこホールでのいがみの権太。でも何と言っても仁左衛門の十兵衛と組んだ沼津の平作役は出色でした。
左が勘三郎
野原明さんは「平成の歌舞伎」という本の中で「勘九郎(勘三郎の前名)は『芝居がうまい』というのが曲者」と評し、上村以和夫氏は彼のことを「永遠のアンファンテリブル」と称していました(「21世紀の歌舞伎俳優たち」)。

アンファンテリブルとは「早熟・非凡で大人の意表外に出る行動をとり、脅威を感じさせる子ども」のこと。まさに、いくつになっても子どものような無邪気さで、コクーン歌舞伎や平成中村座などのチャレンジを続けてきた彼は、ついに神様までも恐れさせてしまったのか。そして天に召し取られたのか。

勘九郎から勘三郎へ襲名した時に、九から三と六つ減ったことと、彼が大河ドラマ「元禄繚乱」で主役・大石内蔵助を演じたこと、歌舞伎が飛躍的な発展を遂げた元禄時代の再現を彼に託す意味で、「減六時代」という四字熟語を思いつき、住友生命の「今年の四字熟語」に応募したんです、私。

もちろん当選はしませんでしたが、彼がいなくなることは歌舞伎界にとって、「減六」つまり六人の役者が一度にいなくなるくらいの痛手かもしれません。

「勘九郎日記『か』の字」という著作の中で、父親であった先代十七世中村勘三郎が「蝿」となって見守ってくれている、と書いていました。お父さんに「何しに来たんだよ、こんな早く」と言われながらも、これからは二匹揃って勘九郎や七之助の成長を見守ってくれることでしょう。心よりご冥福をお祈りいたします。

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