星と祭より

テーマ:まちづくり
一昨日再訪したのですが、新しい収蔵庫にお入りになられた渡岸寺の国宝十一面観音。やっぱり従前と趣が違う。昨年書いたブログの中で思わず、「この観音様を見て井上靖さんは感動されるか疑問だ」などと不遜なことを吐いてしまいました。著作も読んでいないのに。

ということで、あの後慌てて図書館で「星と祭」を借りて読んだんです。あらすじは、既にお読みの方に対しては不要、まだ読まれてない方に対しても無用でしょうので申しません。が、上記の疑問に対する作者の思いを示唆する部分を同書から抜粋したいと思います。

(1)昨年、お堂から新収蔵庫へ移されたばかりという設定の守山の福田寺にて、主人公の架山と彼を乗せて来たタクシーの運転手の会話。

運転手 「観音さんも、時節で、ああいうところに住むようになったんですかね」
架山 「火事の心配もないし、湿気も防げるからね」
運転手 「でも、やっぱり観音さんはお堂の方がいいですね。あそこにひとりきりでは、淋しいでしょう」
架山 「いや、昔でもひとり厨子の中にはいっていた。今度の方が明るくて、ゆとりがある」


(2)架山が友人の池野と坂本の盛安寺の観音様を拝観に来た時

池野 「(近江の観音様が)どれもいいとすれば、こうしたお堂に収まっているからだろうね。確かに十一面観音像はこういうお堂の中にあるべきなんだろうね。そして、こうして拝むべきものなんだろうね。ほかのたくさんの仏像の中に置かれてあると、こういうよさは出て来ない」


(3)大浦の善隆寺で、架山が近所の農家の女性と立ち話で

架山 「あれは観音さまの収蔵庫ですね」
女性 「そうです。四十年(数年前)にできました。観音さんも、とうとうあんなところへ入れられてしまいました」
架山 「立派な収蔵庫じゃないですか」
女性 「そりゃ、あそこに居なされば、火の心配も、水の心配もありません。でも、息苦しいでしょうね。拝みたいという人が来たら、寺でもせいぜい拝んでもらうようにしておりますが、そうでもしてやりませんと、観音さんも堪りませんが」



う~ん、どうなんでしょうか?まあ功罪両方ありということでしょうか。それとお守りされている住民の方の思いがやはり一番たいせつなんでしょうね。考えてみると曳山博物館だっておんなじか。

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