帰りはよいよい

テーマ:旅日記

さてCMの後は、昨日の続きでございます。

1週間ほどの東南アジア出張の旅も終りを告げ、帰国の途につく我が部長と平社員の私。確か、帰りはファーストクラスではなかったような気がいたします。でも、さほど不快だった記憶もございませんので、恐らくビジネスクラスだったんだと思います。

実は私、帰国の前日くらいだったと思いますが、お腹の不調を実感いたしておりました。激しい腹痛、水のような便とまではいきませんが、泥状の軟便、つまり通常言うところの「下痢」の症状を自覚いたしておりました。

さて、成田空港に到着する少し前に、スチュワーデスさん(今はキャビン・アテンダントとか言うんですか?)が黄色い紙をお配りになられました。見ると、体に不調があれば申告せよ、と言った趣旨のものでありました。米国に旅行した際はこんなもの書いた覚えはありませんので、行き先によるのでしょうか。

「そう言えば、下痢気味だなあ」と湧き上がった感覚に従って、ごく自然に、ごく正直に、私の右手に委ねられた鉛筆は、その黄色い紙の「下痢」の欄のところに、何の疑問もてらいもなく、くるりと円を描いたのです。これが悲劇の始まりでありました。

成田に到着いたしまして、通関を通ったところだったと思います。おもむろに私一人が引き止められ、検疫所なるところに留置されることになりました。「ちょっと待ってください!」と叫んで、一人事情を知らず先を行く部長を追いかけ、「部長!検疫所につかまりました」と報告し、すぐにUターン。

検疫所で行なわれたことは、はっきりとは覚えておりませんが、検査のためお尻に突っ込まれたガラスの管のあの冷たい感触だけは一生忘れることはないでしょう。「大変なことをしてしまったようだ」、そう思いました。

検査、いや採便が終わると、そこを出て猛烈なスピードでダッシュをいたし、バゲージクレームへ向かいました。ようやくたどりついたその瞬間、何と我が部長が、部長様がですよ、この平社員である私の重いトランクを、流れ来るベルトコンベアから「よいしょ」と下ろされるところだったのです。

本来なら、私が部長のトランクを下ろさねばならないところにこの大失態。「申し訳有りません!」と平身低頭いたしますと、「君、まじめに申告しちゃったのか?」と優しく、しかし目が笑ってない声で確認されました。私は何のために部長のお供で海外出張をさせてもらったのか。これでは海外失調ではないか。

数日後に検疫所から「とくに深刻な病気ではない」ということを告げられ一安心はしたものの、この1年後ほどに結婚が決まった際、部長に仲人をお願いして断られたのは、この事件と決して無縁ではなかった、と私は確信しています。

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