ひょんなこと

テーマ:言葉・漢字
ひょんなことを言うようですが、ひょんなことってどんなこと?大辞泉で調べますと「ひょんな」(連体)で出て参りまして、意味は「思いがけないさま」「意外な」「妙な」ということになります。

歌舞伎「引窓」の中でも、老母が息子長五郎の髪を剃る場面で、手先が震えて思わず顔を傷つけてしまう場面がございまして、この瞬間、老母は「これはひょんなことをいたしました」とつぶやきます。従って、この言葉は現代語ではなく、少なくとも江戸時代にも使われていたということです。

「ひょんな」は連体形でありますから、終止形は「ひょんだ」。つまり「ひょん」に何らかなの意味があるわけです。では「ひょん」とは何なのか?

江戸初期の俳人である安原貞室という人は「是はひょんという木の実の、えもしれぬ物なるよりいへること葉」ではないか、とヒョンノキ(=イスノキ、ユスノキ)説を唱えており、この「ひょんの実」は、その穴を吹くとひょうひょうと鳴るんだそうであります。
ヒョンノキ
ひょんの実
さらに彼は別に説を立て、瓢(ひょうたん)の形がおかしいので、変なことという意味で「ヒョウゲタ」といい始めたかもしれない、とも言い、いずれにせよ確信はなかったようであります。

こうしたことは「ことばの由来」(岩波新書)という本に書かれていたわけですが、著者の堀井令以知氏ご自身は「ヒョン」の元は「ホヨ、ホヤ」であるという説を採りたい、とおっしゃっております。

「ホヨ」とは「ヤドリギ(寄生木)」のことだそうで、東北地域では今でもヤドリギをホヨとかヒョウという地域があり、ヤドリギのホヨ・ヒョウは計り知れない力を持つとされ、ホヨを取って頭にかざしてめでたい印としたそうです。
  
ヤドリギは、ほかの樹木に寄生して生育し、本体の木の葉が枯れても常緑のままであったり、鮮やかな彩の実を付けたりするところから、尋常でない力を有する木として世界中であがめられてきた。それが、「妙な、突飛な、予期しない、意外な」気持ちを示すものとなり、人間の力以上のものを感じて「ひょんなこと」という表現が出来たと考えるのがよいだろう。

などと、上著には書かれておりますが、私などは本当にそんな面倒くさい連想から生まれてきたのだろうか?と思ってしまいます。むしろ「ひょっとしたら」の「ひょっと」と関係あるんじゃないか、「ひょっと」+「変な」ことを「ひょんな」と思わず誰かが口走って、「お~、それいいねえ、使えるよ!」なんて皆が流行らしたんではなかろうか...

なんて「ひょんな」ことを考えついたんですが....。

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