油買うもよし、売るもよし。楽しく老いるためのオイル日記
兼好診断(8)じゃなゐ
テーマ:よもやま話
2011/03/31 09:08
久々の兼好診断なんですが、今回は徒然草でなくって「方丈記」。なので兼好じゃなくて長明なんです。健康じゃなくて長命なのは困りますね。健康で長命が一番。それはともかく、兼好診断じゃ「なゐ」んです、要するに。
新聞のコラムに、しばしば方丈記の中の地震についての言及が登場いたしました。地震は当時、「なゐ」と呼ばれていたそうです。「今地震です」っていうのは「なゐなう」?どうでもいいですね、そんなこと。さて原文を記述いたしますと、
「また、同じころかとよ、おびただしく大地震(おおなゐ)ふること侍りき。そのさま、よのつねならず。山はくづれて河を埋み、海は傾きて陸地をひたせり。土裂けて水湧き出で、巌割れて谷にまろび入る。なぎさ漕ぐ船は波にただよい、道行く馬はあしの立ちどをまどはす。
都のほとりには、在々所々、堂舎塔廟、一つとして全からず。或はくづれ、或はたふれぬ。塵灰たちのぼりて、盛りなる煙の如し。地の動き、家のやぶるる音、雷(いかづち)にことならず。家の内にをれば、忽ちにひしげなんとす。走り出づれば、地割れ裂く。羽なければ、空をも飛ぶべからず。龍ならばや、雲にも乗らむ。」とあり、
「恐れのなかに恐るべかりけるは、只地震(なゐ)なりけれとこそ覚えしか」と、地震ほど恐ろしいものはないと述べておられます。続いて、余震にも言及し、
「かく、おびただしくふる事は、しばしにて止みにしかども、その余波(なごり)、しばしは絶えず。よのつね、驚くほどの地震、二三十度ふらぬ日はなし。十日・廿日過ぎにしかば、やうやう間遠になりて、或は四五度、二三度、若しは一日まぜ、二三日に一度など、おほかたその余波、三月ばかりや侍りけむ」
余震も三ヶ月経たないと治まらなかったんですね。さらに続きます。
「四大種のなかに、水・火・風はつねに害をなせど、大地にいたりては異なる変をなさず。昔、齋衡のころとか、大地震ふりて、東大寺の仏の御首落ちなど、いみじき事どもはべりけれど、なほこの度には如かずとぞ。すなはちは、人みなあぢきなき事をのべて、いささか心の濁りもうすらぐと見えしかど、月日かさなり、年経にしのちは、ことばにかけて言い出づる人だになし。」
地震当座はみんな、この世の無常を悟り、愚かな欲望や執着も取れて、心の濁りも多少薄らぐかと思ったけれど、月日が経つにつれて、地震のことなどすっかり忘れてしまって、言葉に出す人もいない。と長明さん嘆いておられます。
さて、方丈記といえば「無常観」。この世のはかなさを書いていると言われますが、瀬戸内寂朝さんは今朝の朝刊で「無常」とは「常なものは無い」と考えたい。「どん底はいつまでも続かない。希望を持って」と説いておられました。人心を落ち着かせるべし。今こそ、宗教家の出番かもしれませんね。
新聞のコラムに、しばしば方丈記の中の地震についての言及が登場いたしました。地震は当時、「なゐ」と呼ばれていたそうです。「今地震です」っていうのは「なゐなう」?どうでもいいですね、そんなこと。さて原文を記述いたしますと、
「また、同じころかとよ、おびただしく大地震(おおなゐ)ふること侍りき。そのさま、よのつねならず。山はくづれて河を埋み、海は傾きて陸地をひたせり。土裂けて水湧き出で、巌割れて谷にまろび入る。なぎさ漕ぐ船は波にただよい、道行く馬はあしの立ちどをまどはす。
都のほとりには、在々所々、堂舎塔廟、一つとして全からず。或はくづれ、或はたふれぬ。塵灰たちのぼりて、盛りなる煙の如し。地の動き、家のやぶるる音、雷(いかづち)にことならず。家の内にをれば、忽ちにひしげなんとす。走り出づれば、地割れ裂く。羽なければ、空をも飛ぶべからず。龍ならばや、雲にも乗らむ。」とあり、
「恐れのなかに恐るべかりけるは、只地震(なゐ)なりけれとこそ覚えしか」と、地震ほど恐ろしいものはないと述べておられます。続いて、余震にも言及し、
「かく、おびただしくふる事は、しばしにて止みにしかども、その余波(なごり)、しばしは絶えず。よのつね、驚くほどの地震、二三十度ふらぬ日はなし。十日・廿日過ぎにしかば、やうやう間遠になりて、或は四五度、二三度、若しは一日まぜ、二三日に一度など、おほかたその余波、三月ばかりや侍りけむ」
余震も三ヶ月経たないと治まらなかったんですね。さらに続きます。
「四大種のなかに、水・火・風はつねに害をなせど、大地にいたりては異なる変をなさず。昔、齋衡のころとか、大地震ふりて、東大寺の仏の御首落ちなど、いみじき事どもはべりけれど、なほこの度には如かずとぞ。すなはちは、人みなあぢきなき事をのべて、いささか心の濁りもうすらぐと見えしかど、月日かさなり、年経にしのちは、ことばにかけて言い出づる人だになし。」
地震当座はみんな、この世の無常を悟り、愚かな欲望や執着も取れて、心の濁りも多少薄らぐかと思ったけれど、月日が経つにつれて、地震のことなどすっかり忘れてしまって、言葉に出す人もいない。と長明さん嘆いておられます。
さて、方丈記といえば「無常観」。この世のはかなさを書いていると言われますが、瀬戸内寂朝さんは今朝の朝刊で「無常」とは「常なものは無い」と考えたい。「どん底はいつまでも続かない。希望を持って」と説いておられました。人心を落ち着かせるべし。今こそ、宗教家の出番かもしれませんね。
コメント
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yたたみ2011/03/31 20:00ちょうど鴨長明と同時期に法然、親鸞、道元、日蓮などの大宗教家が出ていますね。
当時は終末思想に走りあの世に心の安寧を求める思想が広まりましたが、現代はプロの宗教家でない人がメッセージをあちこちで発しておられる様な気がします。
なるほど無常とは力強いメッセージですね。 -
2011/03/31 20:10>『常でないものは無い』
佳い言葉をいただきました。ありがとうございますm(_ _)m
本当に『心』とは持ちようですね…(*^^*) -
2011/03/31 21:13>yたたみさんへ
あの時代に無常観と大宗教家が出現しているということは、やはり危機的な時代だったんでしょうね。今回の震災も日本の将来の姿を決めるものになる可能性があるかもしれませんね。
>筍さんへ
最後の部分だけ、今朝の朝刊を見て書き換えました。瀬戸内さんはさすがですね。悪いことばかりは続かないはずです。 -
ニルモン2011/03/31 22:09ニッポン4大随筆。
1吉田兼好「徒然草」、2鴨長明「方丈記」、3清少納言「枕草子」、4油屋惠太夫「甚と忍苦」 -
2011/03/31 22:46↑
追加でひとり
5ギター侍「ゆうじゃなゐ~」 -
ニルモン2011/03/31 22:59日吉屋さんは栄寿司の東隣りでしたよ。西華園をお忘れ無く。風疹入院の臼田医院もね。
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2011/03/31 23:23>ニルモンさんへ
そんなほめてどうするなゐ?
>くんさんへ
なつかしいじゃなゐ~
>ニルモンさんへ
栄寿司さんって、例の素人が寿司握ってた?(笑)
日吉屋さん思い出しました。西華園も思い出したぁ。
風疹うつすかぁ~~~(笑)
私は武蔵野の味噌ラーメンが好きでした。 -
まこりん2011/03/31 23:25↑昔の記憶?いつもの事ながら本当に様々な記憶力がすごい!!
感心します!あやかりたいくらいです。笑
油屋恵太夫かぁ。。。うまく命名しゃありますね。
イッパイ名前あるんですね。油甚さん!(^_^;) -
2011/04/01 00:33BEATLESにStrawberry Fields Foreverという名曲があり、歌詞中に Nothing is real.という言葉があって、この解釈が
現実的なものは何もない とするか 無こそが現実である とするかで分かれていたことを思い出しましたな。
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2011/04/01 09:27>まこりんさんへ
ニルモンさんとは湖国寮で2年間相部屋。色々と面白いエピソードあります。また書いたろ(笑)
>ねむりはかせさんへ
Nothing is real. 色即是空、空即是色みたいなもんですか?