油買うもよし、売るもよし。楽しく老いるためのオイル日記

聞くと刀

テーマ:曳山・歌舞伎
「菊と刀」という著作の中で、文化人類学者であるルース・ベネディクトは「西欧文化は倫理基準を内面に持つ『罪の文化』であるのに対し、日本文化はそれを外部(世間体・外聞)に持つ『恥の文化』と規定いたしました。

そんな難しい話はどうでもいいのですが、曳山祭・子ども歌舞伎の稽古も昨日で5日目となりましたが、読み稽古は2日ほどで終り、立ち稽古に入っており、振付の先生が役者に全体的な芝居の流れと動きを覚えさせる段階に入っております。

読み稽古は坐って台本に従ってセリフ読みをするものですが、この時点ではかなり上手にセリフを言えてるな、と思っても、いざ立ち稽古に入り、動作が伴いますと、そちらの方に神経が行きますので、セリフはいつの間にか疎かになり、棒読み状態に帰ってしまいます。

従って、やはり動きのある立稽古の中でセリフを入れていかないと意味が無いのだ、と振付の先生はおっしゃいます。

さて、歌舞伎には色んな役柄があるわけですが、子どもにはどんな役が人気があると思われますか?主役をやってみたい。面白い道化役がいい。女形もいいな。と人それぞれ違いがあるのではないか、と思いますよね。

ところが、実際に「何役がやりたい?」と聞きますと、子どもは役の良し悪しなどにはあまり頓着せず、「とにかく刀を持ちたい」と言います。悪人の役であっても、刀を持つことができさえすればOKみたいなところがあります。

一方、意外と人気がないのが女役。女役だけは勘弁して欲しい、それなら出ない!とダダをこねて、期待していた親をがっかりさせる子もおります。親は女役をさせたがるんですよね~、逆に。可愛いですもんね。子ども歌舞伎の華です。

絶対にイヤだと言っていた女形の役者の心境も夕渡りを境に一変いたします。なぜなら、観衆の注目を一点に集めることができますから。「はい、ポーズ取ってぇ」と被写体になり、科(しな)をつくると「まあ~、可愛い!」と喚声が上がります。

ここで、一気にスターになって女形の子どもの気分は高揚いたします。一方、刀を差して上機嫌だった侍役の役者は立場の逆転を悟りますが時既に遅し。「聞くと刀」で価値基準を内面に持っていたはずなのに、いつの間にか観衆という外部の評価に価値基準を委ねてしまう、やはり日本は「恥の文化」なのでしょうか?

コメント

  1. 2010/03/29 15:18
    やっぱり、動作とセリフをあわすのは難しいですよね

    僕らも、ギターを弾くだけ、歌を歌うだけだとうまくいくのに

    一緒にやると、ちぐはぐになります。

    弾くとガタガタです
  2. 2010/03/29 17:18
    女役で「うまい!」と観衆を唸らせた印象に残る子を挙げてみると、必ずおわさを演じたI崎さんの名前が出てきますよね。名子役だったとのことです。

    娘こずえを演じたMじや支店さんの息子さんもよかったですよ~。
    彼女、いや彼、いまは本店さん勤務です(笑)
    鳳凰と壽との間で若衆奪い合い勃発か!
    でもどうも・・役者はやりたかったけど若衆にはなりたくないみたいですね。
  3. 2010/03/29 17:32
    >けろっぴさんへ
    やっぱり子どもは刀でしょ(笑)。りんちゃんのお軽は可愛いでしょうなぁ。セリフが沢山あって大変でしょうけど、頑張って下さいね。

    >まーぼうさんへ
    そうでしょう。でも立ち稽古も重ねていくと、段々余裕が出てきて、またセリフも良くなっていきますね。やはり稽古の積み重ねが大事ですね。

    >さんらいずさんへ
    I崎君は4回出てますからね。太功記の婆、どんどろのお弓、弁慶上使のおわさ、そして矢口のお舟だったかな。梢さんは本店勤務ですか?へえ~!兄貴の六郎太夫が鳳凰山だから弟さんは壽でしょうかね。まあ、仲良くけんかしてください(笑)
  4. ねむ姫
    2010/03/29 18:04
    男の子2人育てましたが、刀・・・好きですよね。100均で買った刀を紐で背中に結えた息子たちと、カクレンジャーごっこで私は数えきれないくらい斬られてます。生きているのが不思議なくらい。(笑) 私も選ぶなら刀ですっ。あっ、私は関係ないですね。
  5. Yたたみ
    2010/03/29 20:14
    凡そ30年ぶりに本棚から「菊と刀」の文庫本を取り出してパラパラとめくりましたわ。まあ、少しカビ臭くて、積読でしたけど(笑)
    お世話役御苦労さまです。
    「子供歌舞伎の指導における文化人類学的アプローチ」という論文が書けそうですな…
  6. 2010/03/29 20:29
    たいていの演題において女性がキーとなる役割を果たしているせいか女役の役者さんが
    記憶に残っていますね。近いところでは米原松翁山の仏御前と白拍子。
    古いところではお軽を演じた同級生Fさん。
    貴君は、女形でしたのでしょうね!!
    稽古二日目、〇〇山の稽古場に行きましたら一人だけ赤い緒の下駄を履かれる可愛いお軽さんが走り回っておられました。好演を期待してます。

    下駄やのおじさん
  7. 2010/03/29 20:29
    >ねむ姫さんへ
    「う~、やられたぁ」バタッとかやるわけですね(笑)。私も役者で出た時は刀が差せる役で満足してましたわ。「女役は絶対イヤ」とも言ってたし。

    >Yたたみさんへ
    あれま、学生時代に読まれたんですね。確か当時結構注目された著作でしたよね。論文だなんてとんでもない。単なる駄洒落とこじつけですよ(笑)。
  8. 2010/03/29 23:13
    練習は週に何回ほどあるのですか。
    ご苦労様です。
    仕上がりが楽しみですね。
  9. 2010/03/29 23:13
    >ゲッティさんへ
    女形が主役の芝居は、その役者さえ良ければ受けるワンマン芝居となることが多いので、意外と振付さんとしてはやりやすいと聞いたことがあります。その役者だけで芝居の良し悪しが決まってしまうので恐い面もありますよね。私は男役ですよ~。今なら女形やってみたいですけどね。
  10. 2010/03/29 23:17
    >ゆうこりんさんへ
    春休みなので稽古は毎日です。朝昼晩と2時間ずつ計6時間です。昔と違い若衆の数が少ない上にサラリーマンが多いので、稽古の詰番が大変です。町によっては全て振付さん任せというところもあるようですが。大道具や小道具の作成もあってかなり大変ですよ。

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