だんだん蠱惑なる

テーマ:言葉・漢字
小説などを読んでおりますと、時々普段聞き慣れないような魅力的な言葉に遭遇いたします。例えば「蠱惑的」。これで「こわくてき」と読むんですね。

蠱惑は「人の心を引きつけ惑わすこと」といった意味のようですが、妙にセクシーな女性についての表現に使われることが多く、特に「女が色香で男を惑わすこと」を表すようでございます。

蠱という字はまた恐ろしいというか、ややこしい字を書きますね。以前「虹の正体」という題で書きましたように「虫」一字だと本来は蛇のことを表し、いわゆる「虫」は元々「蟲」という字を書いたんですね。

でね、「蠱」という字の字義を大漢和辞典で調べてみますと、わ!怖いことが書いてあります。「蟲(むし)+皿(さら)」の会意文字で「多くの虫を皿に入れてふたをかぶせ、共食いさせることをあらわす」とあります。

何のためにそんなことを?と思いますわな。もともと「蠱(コ)」とは「まじないに用いる虫」を示したようで、「器の中に虫を入れ共食いさせ、生き残った虫の毒気でかたきをのろう迷信があった」なんて書いてますやん。人を呪うこと、またその人を「巫蠱(ぶこ)」なんて言うそうな。あ~、怖っ!

同じような言葉でも「魅力的」だと「人の心を快くひきつける」んですが、「魅惑的」だと「ひきつけるだけでなく惑わす」ものとなり、さらに「蠱惑的」になると「色香によってたぶらかす」となるわけで、文字通りだんだん「こわく」なっていくわけですね。

あの京都の青酸カリ殺人容疑の67歳のおばちゃんも、家族なし、資産家、年収1000万以上のおじいちゃんたちにとっては、蠱惑的だったんでしょうか。くわばらくわばら。

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