お喜美さんのメッセージ

テーマ:よもやま話
『トテーン・トテーン・・・まだ暗い朝のしじまに響いてくる、巨大な撞木の油を締める音です。それに合わせて菜種を撞く機械の音が、ガチャン・ガチャン・・・と忙しく聞こえてきます。

懐かしい幼い頃からの忘れ得ぬ記憶です。泰蔵(私の伯父)さん、隆次(私の父)さんが居られ毎日の様に遊びに寄せて貰いました。何をして遊んだか定かではありませんが、裏の川辺で「八つ目鰻」を捕まえたり、メダカやエビを取ったり。古井戸の蓋を皆で押し開いて覗いた水面の青黒い色。お店の庭に埋められた大きなカメに移し入れられる油のにぶい黄金色の美しかった事等、取りとめもなく思い出されます。

こんな光景も戦前の事で、戦後になるとガソリン等の需要が増して、隆次さんは一人で全身油にまみれて、あの重いドラム缶を幾つも幾つも暗くなるまで転がらせて居られた姿が目に浮かびます。それのみでなく、仕事熱心で帰宅はいつも夜半になる様でした。御母堂様も「こんなに頑張って身体をこわしやせんかと案じられる」と洩らしておられた程でした。

こんな隆次さんの持ち前の不屈の精神と努力が尊敬と信頼を得られて、公職をいくつも果たされ、今のお店を不動のものになされたのではないでしょうか。礼儀正しく、いつもにこやかに会釈して下さったお姿は忘れられません。

安らかな御冥福をお祈りいたします。』



これは、十七年前、私の父が亡くなった時に、兄が追悼文集の作成を思い立ち、その時に父や伯父の幼馴染であった隣家のおばあさんが書いて下さった父への追悼文です。

昨日は、「お喜美さん」と呼ばれて親しまれていらっしゃった、そのおばあさんのお葬式でした。享年92歳の大往生。父が亡くなった時にいただいたメッセージ、今あらためてここに書き記しておりますと、私たちの世代への叱咤激励のようにも聞こえます。

お喜美さんの、安らかなご冥福を心からお祈りいたします。


(追記)
コブログ・ブロガーの「アロマ大使」さんのご母堂様です。無断で実名を公表させていただきました。申し訳ございません。

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