仁の術

テーマ:曳山・歌舞伎
「柔よく剛を制す」という言葉がありますが、日曜日の夜は「仁よく江を制す」。JIN~仁を見るのが一週間の楽しみとなっております。仁先生はお医者さんですが、医者の仕事のことを「仁術(じんじゅつ)」とはよく言ったものです。

さて、「仁」といえば、先週の朝日新聞夕刊のコラム「人生の贈り物」は歌舞伎俳優・片岡仁左衛門(にざえもん)さんのインタビュー記事でした。仁左衛門といえば、吉右衛門と並んで当代随一の立役であることは誰もが認めるところ。

そんな仁左衛門さんも当初はこの大名跡を継ぐことに大きなためらいがあったそうです。当時は片岡孝夫という名前でしたが、坂東玉三郎と「孝玉コンビ」などと呼ばれて絶大なる人気を誇っていましたが、彼には我當、秀太郎と兄が二人おります。

当然、長兄の我當さんが仁左衛門を継ぐと思っていたので話が来たときは迷い、お兄さんに相談したそうです。そこで「しっかり頼む」と言われ一応受けることにしましたが、まだ迷いは消えなかったそうです。

その後、膿胸、大葉性肺炎という大病を患い生死の境をさまようことになるのですから、人生わかりませんね。食堂に亀裂が生じ、何と6ヶ月間もの間水すら飲めなかったそうです。もう舞台に立つことはないかもしれない、歌舞伎ファンの中にもそう思っていた人たちは少なくないと思われます。

しかし、結局はこの大病が逆に襲名への迷いを消し去る決め手となったようです。仁左衛門さん、次のように語っています。

「大病をしてみて、『生き死に』は自分の意思ではどうにもならず、すべて神様が決めた流れだと思いました。世の中には人間の力でどうにもならない大きな流れがあると思うようになりました。

私に仁左衛門を継がせようという流れがだんだん大きくなっていた。流れに逆らわず、流されるのではなく、流れを生かした方がいいのではないか。もし、私に仁左衛門が無理というのなら、ここまでの流れにはなっていないのではないか、と思いました。」

JIN-仁では「神は乗り越えることのできる試練しか与えない」というテーゼが繰り返し出てまいります。人の命を救う仁術の力と歴史の修正力の間で翻弄されながら自らがそこに送られた意義を探り続ける南方仁先生。仁術に救われて自分の宿命を悟り覚悟を決めた仁左衛門さん。

辞書を引けば、「仁」とは①ひと、人間、そして②自分と同じ仲間としてすべての人に接する心、隣人愛や同情の気持ち、ともあります。大震災から3ヶ月。偉そうなことを言える我が身ではありませんが、「仁」の心があればどんな試練も乗り越えられる、そう信じたいものです。


(追記)
ちなみに、昨日送ってきました、日本フルハップから。大当たり~
大歌舞伎のチケット
仁左衛門さん主演の伊勢音頭

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