なべぶたが無い

テーマ:言葉・漢字
以前、図書館で借りて読んだ「動物の脳採集記」(萬年甫/中公新書)という本は、一見脳というちょっと取っ付き難い分野の話と思いきや、「キリンの首をかつぐ話」という副題から想像がつくように、脳解剖医の実にユニークな体験談が記されていて、誠に興味深いものでありました。

その中の余談として、「」と「」の違いについて書かれておりました。著者がそうであったように私も、「」は「」の略字で意味も同じであろうとずっと思ってきたのですが、さにあらず。

まず「」という字は三つの部分からできており、左半分の「にくづき」は「体の一部を示す偏」であることは周知の通り。で、右半分の上部の「巛」は「頭髪」を意味し、下部の四角い部分は「亠」+「凶」で、頭蓋骨に囲まれた中身の脳を意味しているのだそうです。

さて、一方の「」、現在普通に使われてる方の字ですが、「腦」との字面的な違いと言えば、三本の頭髪の下に「亠(なべぶた)」が無い、ということなんですね。この脳は上が開いている、即ち「小児の頭」を表しているんだそうです。「」は大人用、「」は小児用というわけです。

「赤ん坊の頭の天辺のちょっと額寄りのあたりには柔らかい部分があって、そっと触ってみると呼吸のたびにピコピコと上下しているのをご存知の方も多かろう」と書かれておりましたが、まさにその通り、字は体を表しているんですね。

専門的には「大泉門」というらしいですが、皮膚の下に骨がなくすぐ脳があるという状態は、とても恐くて親としても一時の油断もならない危険な状態ですよね。筆者は「ゴールキーパーのいないゴールのように」と表現されていますが、まさに至言。

昨日の新聞に、理化学研究所などが「子どもの脳は、薬物を大人より速く取り込んでしまう」ことをアカゲザルを使った実験で確認したという報道を目にいたしましたが、「タミフル」での異常行動なんかもこれと関係あるんでしょうね。

しかし、これが出産の時には大きな利点となるんです。つまり、天蓋の接着がはなはだゆるいということは、周囲から圧力が加わると、これらの部分がずれて互いに重なり合ったりして、脳を傷めずに狭い部分を通過できるというわけです。そして、ちゃんとお母さんの体のことも考えた頭の構造になっているんですね。

「これこそが 生まれながらの 親孝行」

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