飲水不忘挖井人

テーマ:よもやま話
先日、「彦根の工事現場で作業の男性転落死か」という見出しで無機質に事故を報じる新聞記事に、住所、年齢、職業からその人以外にあり得ない人の名前が目に入りました。長浜市民国際交流協会(NIFA)で平成7年から同時期に6年間、理事としてご一緒させていただいたYさんの名前です。

国際交流協会という組織は、商売上のしがらみもなく、変な男女格差もなく、東京から帰って来たばかりで地域の濃密な人間関係に彩られた諸団体にやや戸惑い気味だった私にとっては、不思議とリラックスのできる組織だったのですが、Yさんは見かけと行動が異なる実にユニークな存在でした。

補助金を受けながらの活動ということもあり、事業の制約も大きかったのですが、Yさんは自らALTを招いてバーベキューパーティを行なったり、スキーやボーリングに連れて行ったりと、外国人と独自の人間関係を形成しておられました。

しかし全く嫌味がなく、格好をつけてALTをもてなしているというのではなく、心から彼らに長浜の生活をエンジョイしてもらいたいという気持ちと心意気にあふれていたように思いました。Yさんの誘いでそうしたALTたちと酒席を共にしたり、彼らにヒヤリングをしながら外国人生活便利帖を作成したりもいたしました。

若い時にアメリカを放浪し、そこで身につけたという英会話。Yさんご本人は「オレのは英会話ちゃう。B会話や」というのが口癖。文法は二の次、まずコミュニケーションということでしょうか。片言の日本語を覚えているALTに対する日英入り交ざったギャグが秀逸で今でも覚えています。

「My blood type is シュリンプ。わかる?AB(エビ)型よ、OK?」とかね。「Please pass me the out of order.」ってわかります?out of order(故障)、つまり「胡椒を取って」ってこと。ALTも我々もこんなYさんのユーモアあふれるB会話に爆笑しておりました。

同時期にNIFAの理事をやめて、その後は没交渉になりましたが、3年に一度の曳山祭の出番には二つ返事でパンフレットの広告協賛をして下さいました。普段は、早朝から泥まみれになって仕事に従事され、自分の贅沢より他人の幸せのために身銭を切る、そんな人だったと思います。

あまりにも早すぎる不慮の事故死。葬儀の日程もわからなかったので、昨日後悔みに寄せていただきましたが、ご遺族におかけする適切な慰めの言葉は私には見つかりませんでした。

ただ「飲み水を飲む時は井戸を掘った人のことを忘れるな。」ということわざが中国にはあるようです。文字通り国際交流活動を円滑にする為に井戸を掘り続けたYさんの功績を忘れたくないものです。謹んで御冥福をお祈り申し上げます。

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