ききたない

テーマ:曳山・歌舞伎
三役修業塾で長年義太夫を習っていらっしゃる大先輩に「油甚さん、あんた自分の声は録音しゃあれんのか?」と聞かれたことがあります。「はい、しません」とお答えいたしました。

昔は、義太夫の稽古は先生の語られる一行一句をまねて繰り返し、うまくいくまで何度も何度も繰返して学習されたのだそうです。今はテープ、CD、MD、さらにもっと進んだ私の知らない録音技術がございますので、私たちは師匠のお手本や大歌舞伎の芝居の音を何度も聞いて覚えたりするようになってきました。

私が自分の声を録音しないのは、しなくても出来不出来はわかります、などという傲慢さからではなく、自分の声を聞くのが嫌なんです。聞いた途端に、「これかよ~」と落胆してしまい、やる気が失せるのです。経験上、完璧でなくても、上手くいっていると思い込むほうが現実を知るよりましだと思っているからです。

さて、先日行なわれました「ゆう歌舞伎」早くもDVDが出来上がって参りました。

上記の理由で正直言ってあまり見る気がいたしませんでしたが、本番は終わったのでとりあえず見てみる、いや聞いてみることにいたしました。

今回は音程が極端にはずれたところはなかったと思うのですが、まず「語尾が弱い」。常々師匠が「太夫の給金は最後の一文字で決まる」とおっしゃっている理由がよくわかります。いくら途中で声を張り上げても語尾が弱いと、尻切れトンボのようになって、なんとも締まりがない浄瑠璃に聞こえます。

さらに今回は、大歌舞伎の太夫さんのテープで覚えましたので、その方の特徴のある部分を真似したところがとてもいやらしく聞こえました。プロの太夫さんは癖があっても全体的なバランスでまとまるのですが、素人が癖の部分だけ強調するとバランスを欠いてしまうのです。

師匠が常々「まっすぐに語らなあかんよ」とおっしゃるのはこのことかな、と思います。私の同僚の太夫さんでも上手に語ろうとして時々ビブラートをおかけになることがあるのですが、失礼ながら大変聞きづらいものとなってしまうのです。

難しいことはわかっているのですが、それにしても終わりが全く見えない世界です。

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