九分で悶絶

テーマ:旅日記
(昨日の続きです。というか、その前段となります。)

九份に着くと、「セブンイレブンの所から商店街を十分足らず歩いて、千と千尋のモデルになったところで休憩しますからねぇ」と案内する現地ガイド。「水戸黄門」の「黄」と申します、と自己紹介する親日家の愉快なおっさんである。

「おお、ここか」と、確かに商店街というか市場街はセブンイレブンのところから始まり、台湾の食品や雑貨が所狭しと陳列された店が連なっており、台湾内外の観光客でひしめいている。最初は珍しげに首を左右に交互に向けながら、それらの品々を物色していく。

ほどなくして、「何かがおかしいぞ」と脳が呼びかける、「君の嗅覚が異物を感知している」と...。やがて、娘の「くさい!」の一声を皮切りに、家族皆が輪唱の様に「くさっ!」を連発し、事の異常さを確認しあう。「くさいよねぇ」「うん、くさい」「何これ、どぶの臭いじゃないし、おしっこでもない」「それにな~んか甘ったる~い線香みたいな臭いもする~」

気になりだすと、並べてあるものすべてが異様な香りを有した物体に感じられる。一刻も早くこの通りから抜け出さなくてはいけない。そう思った瞬間、「黄門」の黄さんが「このお菓子はこちらの名産あるよ」と甘ったるいおもちのような菓子の試食をさせてくれる。

ゲロゲロと思いつつ、「うん、うまい」とか愛想を言いながら、早く立ち去りたい!と目で訴える。

ようやく、坂道を降りる分岐点にたどりつき、昨日紹介した「阿妹茶酒館」に逃げ込んで、中で冷たい台湾銘茶を頂きながら一息つく。1時間ほど自由時間があるけど、家族の皆が「二度とあのにおいのところには戻りたくない」と言いながらも、「しかし一体においの原因は何だろう?」と好奇心だけは旺盛。「よし俺が確かめてくる!」とデジカメを持って、再度坂道を駆け上がり、「臭いの暴力街」へ。

くさいものは避けると余計に臭く感じるものだ。こういう時にどう対応したらいいかは、幼少時の無謀な体験が役に立つ。バキュームカーに出くわした時におもいきり息を吸い込むと、鼻が悪臭で麻痺して新たな悪臭に対して感覚を失ったものだ。勇気を出して「ふ~~ぅんんん」と吸い込むと、あ~ら不思議、おっ平気じゃん。

ということで、麻酔が効いているうちに臭いの原因と思われる物体の写真を撮りまくる。
「おまえか?くんくん」
「こいつか?くんくん」
と警察犬よろしく犯人をつきつめていく。あらゆる種類の悪臭に正常な判断能力を喪失しかけていた鼻粘膜がついに捉えたのは。

「おまえか~!!」

それは「臭豆腐」と言われる物体であった。「臭い豆腐」ってそのまんまやん。腐りきった泥のような汁の中で「さあどうだ」と言わんばかりに自己主張する奇妙な物体。食べるとおいしいと言うから、くさやや鮒寿しと同じような発酵食品なのであろう。しかし、私にはとてもこれを食する勇気はない。

この後、家族全員、鼻の穴一面が「九份臭」に取り付かれ、夕食の北京ダックからホテルのシャンプーに至るまで、すべてこの臭いが混じっているように感じられ、台湾初日の夜は憂鬱なうちに更けていった。


九份 それは二度と行きたくない街 
でも必ず訪れて欲しい街 
行く前は九分 
行った後はもう十分




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