ホームレスの歌人

テーマ:よもやま話
朝日新聞を購読の方は、おそらくご存知かもしれない。毎週月曜日の朝刊に掲載される朝日歌壇に「公田耕一」さんなる経歴一切不明のホームレスからの投稿が話題になっていることを。

 ・(柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ 

という歌で初登場以来、以下のような歌を投稿している。(「遊びをせんとや生まれけむ」というブログを参照させていただきました)

 ・鍵持たぬ生活に慣れ年を越す今さら何を脱ぎ棄てたのか 
 
 ・水葬に物語などあるならばわれの最期は水葬で良し
 
 ・パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる
 
 ・日産をリストラになり流れ来たるブラジル人と隣りて眠る

 ・親不孝通りと言へど親もなく親にもなれずただ立ち尽くす

 ・百均の「赤いきつね」と迷ひつつ月曜だけ買ふ朝日新聞


住所がないために投稿謝礼も応援の声も届けることができないことから、2月16日付けで同新聞が連絡を求めた掲載記事を出したところ、

 ・ホームレス歌人の記事を他人事(ひとごと)のやうに読めども涙零(こぼ)しぬ

という歌を記したはがきに『皆様方の御厚意本当に、ありがたく思います。が、連絡をとる勇気は、今の私には、ありません。誠にすみません。(寿町は、東京の山谷・大阪の釜ヶ崎と並ぶ、ドヤ街です。)』という言葉が添えられていたそうな。

さらに、次のような歌も
 
 ・胸を病み医療保護受けドヤ街の柩(ひつぎ)のような一室に居る
 
「健康を取り戻して頑張ってほしい」などという応援歌も所詮外野席からの無責任な励ましのようで空しい。「私はそんな境遇でなくて良かった」、それが心底本音の自分が悲しい。

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