最後のボタン

テーマ:よもやま話
先日、親戚の葬儀に参列いたしました。さて故人との「最後の別れ」などと申しますが、実は3回最後の別れがあるように思えます。まず告別式では棺に蓋をする前に故人との最初の「最後のお別れ」があり、お花などを手向けます。この時は直に故人の体などに触れることができる最後の機会です。

告別式が終わりますと、斎場を離れ火葬場へ向かいます。私が小学生の頃は現在の湖北広域行政事務センターのゴミ焼却場の辺りに火葬場があったと記憶しておりますが、現在湖北住民は、火葬場としては湖北町下山田の「こもれび苑」を利用しております。

さて「こもれび苑」ではお寺さんの読経を頂きながら、焼香をしてガラス越しに故人との最後の対面をしますが、これが二度目の「最後のお別れ」と言えるでしょうか。最早故人に触れることはなく、無言で「お疲れ様」「ご苦労様」「ありがとう」と声をかけます。

そしていよいよ棺は焼却炉の前に運ばれ、係りの方が台車を操作しながら棺を中に挿入いたします。この間遺族は固唾を呑んで事の次第を見守ります。棺が中に納まり扉が遮断されます。ガチャンという悲痛な音が余韻を残します。あの音で死者が目覚めはしないか?不届きな詮索が頭をよぎります。

これでいよいよ最後の「最後のお別れ」か、と思うその瞬間、係りの人の「代表者の方前にお願いします」の声。そして扉手前右側にある着火ボタンを指差して、最後の一押しを彼の手に、いや一本の指に委ねるのです。

私の父が亡くなった時は兄がこの過酷な務めを果たしました。それ以降も親戚の葬儀に何度か出席し、同じ光景を何度か見てまいりました。ほぼ例外なく、くぐもる咽び泣きの声を伴っての一押し。「何という辛い役目か」いつもそう感じてしまうのです。

ちなみに湖北以外の親戚の葬儀にも何度か出席し、同じ局面に立ち会ったことがありますが、特に都市部などでは「最後のボタン」は火葬場の係員が事務的にあっさりと押す地域ばかりでありました。

誰が決めたのか?また、どちらのスタイルがいいのか?私には何とも答えようがありません...。

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