融通きかん

テーマ:保険・金融
先日某銀行に赴き、保険代理店の口座から手数料分を出金し自社の口座に振替えるという手続を窓口でお願いした。保険代理店名義は「○○○○損害保険株式会社 代理店 株式会社△△ 代表取締役 ××××」と長いため、以前は専用のゴム判があったのだが、保険会社の社名が合併で変ってからは変更部分だけを切り取って手書きで書くようにした。

ところがうっかり「損害」と書くのを漏らしてしまい○○○○保険会社と続けて書いてしまったので訂正印を求められた。「払出票を自店で書いて持参したので印鑑は持っていない」と言うと「ついでの時に印鑑を持ってまたお越し願えませんか」と言われる。金額の間違いであればアーもウーもないのだが、ただ文字を書き入れるのに訂正印が要る事に納得が行かず食い下がる。

何でも文字が横一列に並んでいればいいが、下の段などに書き加えると後で書き入れたことがわかるので具合が悪いのだそうである。窓口の女性は上司にお伺いをたててくれたが結果は同じだった。「それなら口座を解約する!」とつい口走ったら、その上司はあわてて「ではお店まで訂正印をいただきに参ります」と言い実際雨の中徒歩で来てくださった。気の毒になり帰りは車で送った。

窓口の女性も上司も間違ったことは一つもしておらず、彼らからすれば私こそが理不尽な客である。しかし見ず知らずの者ならともかく、常々出入りしており氏素性もはっきりしている者に対して余りに融通が効かなさすぎではないか。金融庁の方に目が行き過ぎて責任回避のためのシステム作りに明け暮れているのは銀行のみならず保険業界も含めた金融業界に共通である。いつの間にか金融機関は「融通きかん」になってしまった。

「ぼちぼち結論」(養老孟司 中公新書)より
『この国はナァナァでマアマア...それが幸せということを理解できない人が増えたから規則をつくりたがる』

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