結・万葉びとのこころ

テーマ:よもやま話
ついでなんで、上野誠先生の講演に出てきた話、全部書いちゃうことにします。だって面白いんですもん。皆さん、安さに飛びついてバーゲン品を買って失敗した、いわゆる「安物買いの銭失い」の経験ありません?

何と奈良時代にもそんなことがあったという歌が残っているんですね。

西の市に ただひとり出で
目並(めなら)べず 買ひてし絹の
商(あき)じこりかも

(上野先生訳)
西の市に 一人でいって
よく見比べず 買ってしまった絹は
買いそこない(だったよ~ん)

この歌には、実はこの時代においては「隠れた傷のないかぎり、返品できない」という経済の論理が浸透してきたという裏の意味が隠されているんだそうです。返品できないからこそ、買い損ないになるわけですね。


ところで、古代においては恋人同士は相手を思い出すもの、つまり「形見」を交換したそうです。普通の古典研究家はここで止まるらしいですが、上野先生は(自称)天才なので、じゃあもし恋人たちが別れたらその形見はどうするのか?と考えたそうです。

そして古典の中に、ある歌を見つけるわけですね。ある時天皇から寵愛を受けている娘がいたが、やがてその寵愛が薄れたのちに、天皇は「形見」をお返しになった。娘は恨みに思って、とにかくも次の歌を作り天皇に献上したそうです。

商返し(あきかへ)し
許せと御法(みのり) あらばこそ
我(あ)が下衣(したごろも)
返(かへ)し賜(たま)はめ

(上野先生訳)
買った品物を不良品でもないのに
身勝手に契約解消して返してよいという法律が
この天皇さまの国にあるというのでしたら・・・
私がアナタにあげた下着を勝手に送り返して来てもよいでしょう
(デモ、ソンナ法律アッタカシラ)

先の歌にあったように、この時代、不良品でない限り返品はできないわけですね。しかも、その法律をお作りになる天皇さまご自身が、それを破って形見を返して来られたことに対する恨みの歌です。

それにしても、この時代、恋人同士はお互いの下着を交換したんですね。それも、身につけていたものを洗濯せずに、というのが決まりだったそうです。ちなみに、この天皇さま、時代からして、かの聖武天皇だったとか...。

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