続・万葉びとのこころ

テーマ:よもやま話
さて、昨日のブログちょっと長くて、最後まで読んでない人多いやろけど、「日本霊異記」に描かれた、親不孝な男の話。このように続きます。


皆が帰った後、母親はなぜか自らの乳房を出して、悲しみで目を濡らしながら、こういったのである。「おまえを育てたときは、忙しくて日夜休む時間もなかった。他人の子供は、成長してその恩に報いている。

それを見るにつけ、こちらはどうだ。私はこんな非道な子供を持って、いま反対におまえから辱めを受けている。私の期待はむなしく砕かれた。おまえは今、私に貸し付けた稲の代価を求めた。

ならばまた、私もおまえに与えた乳の代価を請求しよう。母と子の道は今日をもって閉ざされた。天界の神もご覧あれ、地上の神もご覧あれ、悲しきかな、痛きかな ―」と。

彼は一言も発せず、立ち上がり、持っていた借金の証文をすべて焼き払い、発狂したという。そして、ある日膽保(みやす)の家から突然発火し、全財産を失って、家族は離散。最後は、飢えて寒さに凍えて...。


死んでしまったんですね。このお話の主眼は「乳の代価は無限大」ということ。乳の代価を請求された私たちはそれを払うことなど到底できないわけですよね。

人間関係の基礎である親子関係を絶たれ、アイデンティティを失った膽保(みやす)は、自分が何かわからなくなって死んでしまうという、すさまじい結末。

これが奈良時代に書かれた古典です。古典はその時代に即した肌触りの言葉で書かれていながら、現代でも生き生きと説得力をもって訴えかけてくるものですね。この日は道徳教育研究会ではなかったのですが、何物にも勝る道徳教材であったような気がします。

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