兼好診断(11)鰹

テーマ:よもやま話
一昨日の日経新聞に、これまで割高だったカツオの価格がようやく平年並みに落ち着いてきた、と書かれておりましたが、カツオのたたきは私の大好物の一つでもあり、大変嬉しいニュースです。


徒然草 第百十九段

鎌倉の海に、鰹と言ふ魚は、かの境ひには、さうなきものにて、この比もてなすものなり。それも、鎌倉の年寄の申し侍りしは、「この魚、己れら若かりし世までは、はかばかしき人の前へ出づる事侍らざりき。頭は、下部も食はず、切りて捨て侍りしものなり」と申しき。 かやうの物も、世の末になれば、上ざままでも入りたつわざにこそ候れ。

さて、この時期旬を迎え「初鰹」として珍重されるこの魚も、兼好法師にかかってはたまったものではありません。「カツオは今でこそもてはやされているが、昔は身分の高い人の食べるものではなかった。こんなものを食べるようになっては世も末だ」と言い放ちます。

なんだか、昔は猫もまたいだというマグロのトロを現代人が争って食べているという現象を連想させる文章ですが、もともとカツオは生で食するものではなく、乾魚として食されたのですね。今の鰹節とは違い、煮て乾燥したものだったようです。

いずれにしても、もともとは「堅魚」と書かれていたようですが、干して堅くなった魚なので、後に「鰹」という国字が作られたようです。魚偏の漢字の多くは国字、すなわち日本で作られた字なのですが、実は「鰹」という漢字は中国にも元々存在しましたが、それは別のものを意味したようです。

さて、それは何だったのか?なんと「大うなぎ」のことだったので~す。先日も書きましたが高騰するウナギ価格。文字通り、主婦の財布の紐が堅くなる魚ですね。



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