可惜

テーマ:言葉・漢字
「可愛やあったらもののふをむざむざ殺しにやりました」。これ、歌舞伎絵本太功記尼ヶ崎の場に出てくる光秀のお母さんのセリフなんですが、「あったら」ってどういう意味なのかとずっと疑問に思っておりました。

疑問に思ったことはすぐ調べるんとちごたんかい、と思われるかもしれませんが、歌舞伎や浄瑠璃の言葉をいちいち調べているとキリがないのも事実。で、わからないまま放っておいたんですが...。

先日、Qさまを見ていて漢字の読みを当てる問題でどうしてもわからないのが一つありまして、それが「可惜」。「かせき」か?と思ったんですが、そんなまともな読みが正解なわけない。何やろ?

と考えているうちに、若い女性アナか誰かが「あたら」と書いて正解。Fine Playですよね、これは。もしかして、この「あたら」って、冒頭の「あったら」と関係あるんでは。いや、関係あったらどうしょう。としょうもないダジャレは措いといて。

調べてみますと、「可惜(あたら)」とは「あったら」とも言い、「惜しくも、残念なことに」とあります。確かに「可惜」は「惜しむ可き」と書きますわな。

で、この「あたら」は元は「あたらし」という形容詞から来てるんですね。「可惜し(あたらし)」は「そのままにしておくには惜しいほどりっぱだ。すばらしい。」または「 それにふさわしい扱い方をしないのは惜しい。もったいない」という意味。

「あったら」は立派な武士に育った孫がむざむざと戦場に送り出される瞬間の、老婆の絞りだすような感情の迸りだったのでしょう。現在は「あたらし」といえば、もっぱら「新しい」ということになり、本来の意味で使われることはほぼ無くなりました。

でもね、前にも書いた気がしますけど、「新しい」は元々「あら(新)たし」が「あたら(可惜)し」と混同して音変化して生じた言葉なんだとか。偽物がいつの間にか本物に成り代わってデカイ顔をしてのさばっているわけで、本家の「可惜し」さんとしては、それこそ「あたらし」極まりない気分でしょうな。

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