始末する社会へ

テーマ:よもやま話
一週間ほど前の朝日新聞に絵本作家でイラストレーターの永田萌さんが「私と環境」というテーマのコラムに寄稿されておりました。

以前に曳山文化協会の伝承委員会に所属していると申しましたが、その活動のひとつに「市民曳山まつり講座」の開催があり、永田萌さんには平成13年6月に第2回講座の講師として来ていただきました。

もともと曳山博物館のリーフレットの表紙デザインを依頼した縁だったのですが、その講演以来長浜とは浅からぬ関係が生まれ、特に現伝承委員長のT氏などはホスピタリティ精神をいかんなく発揮され、今では永田さんが大切な友人として新聞等でも紹介なさるほどです。

さて当のコラムは『感謝の心で始末する』という内容で、「欧州の友人達の始末することの徹底ぶりには驚かされるのだが、かつては日本人がそうであったのに、いつのまにか巨大な消費社会となって生産者の姿が見えにくくなってしまった」と書かれています。そして「他人の労働に感謝すれば物は大切に思える」のだと続きます。昔は確かに米一粒粗末にするとお百姓さんに申し訳ないとしかられたものです。

物余り、飽食の時代が続き、余りにも「消費者」側に焦点をあてた報道や考え方が蔓延していたように思います。「お客様は神様です」というフレーズにしても、生産者や販売者の訓戒としてよりも、消費者側の傲慢さに加担する
言葉として利用されてきたように感じます。

だれもが消費者であると同時に消費財の生産者やサービスの提供者であるにもかかわらず、消費者としての権利意識ばかりが強くなって、提供者側への労働に対する感謝が余りに希薄になっているのではないかと思うのです。「始末」という言葉は本来始まりと終わりという意味であります。始まりである生産者と終わりである消費者が、お互いに「ありがとうございました」と言えるような社会にしたいものです。

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