パソコン事始(4) VISICALC と SCRIPSIT

テーマ:コンピュータ
回顧録その4

表計算ソフトの元祖ともいえるVISICALC(Visible Calculatorを由来とするらしい)は最初AppleⅡに作られて爆発的に売れた。その後1980年にTRS-80用が発売された。売価はたしか40000円。

visicalc

これはAppleⅡ用の画面で、TRS-80だと64×16行なので

visicalc2

/を入れてコマンドキーを押すインターフェイスはこれが原点か・・・

卒業後名古屋の会社に丁稚奉公として就職した後だと思う。それまではバイトと、パッチ当ての特権でいろんなソフトはタダでコピーして使っていた(あのころは今よりもっと鷹揚だった)けど、これとBASICコンパイラとマクロアセンブラは購入した。もっとも名古屋へ移っても、金を持っている医者の先生がアメリカから輸入したソフトのパッチを当てるという作業は相変わらずだったけど。

プログラムという作法なしに、縦横計算がその場でリアルタイムに計算・表示されるのにはびっくりした。表計算という新しいプラットフォームができたのだ。今思い返しても、現在EXCELで通常使っているような機能は当時とかわらないと思う。A1,B2といったセルの名前の付け方も同じである。このVISICALCを使って、自分がルートセールスするお客さんの実績表や予算表を作っていた。

学生時代のバイト先で顧客管理プログラムなるものをBASICで作ってみたけれど、実際のところ紙の住所録をコンピュータに載せただけという程度のものだった。VISICALCのように、データを加工して分析するというツールの出現は、ソフトウェアのあり方を大きく変えたと思う。VISICALCはその後Lotus1-2-3に吸収される。

同時期にSCRIPSITという、これもアメリカ製の英文ワープロソフトを使い始めていた。まだ日本語はカナ文字だけだったから、文章作りには使えない。日本語ワープロは、日本語タイプと同様に漢字の一覧から選ぶというスタイルのものが出始めたころだと思う。英文だが、ワードラップやタブ、センタリングなど一通りの機能は揃っていた。当時、ソフトウェアのマニュアルはほとんどが英文だったし、自分で作ったソフトウェアの仕様書やマニュアルも英文で作っていたので十分だった(カナ文字による仕様書では読みにくくて役割を果たせなかった)。

パソコンがBASICでプログラムを組むという初期の段階から、仕事のためにアプリケーションを使い始める時代の走りであったように思う。

パソコン事始(3) microPASCAL

テーマ:コンピュータ
回顧録その3

1979年の暮れに大学も卒業近くになって卒論に追われていた頃、アスキー編集部の宮崎さんから電話があって、「実は整数型言語としてmicroPASCALというのがあるんですけど、これの移植をやりませんか」という話。PASCALというのは、プログラミング技法をちゃんと明快な手続きにして読みやすくするために作られた構造化プログラミング言語で、BASICのようにサブルーチンの中で元のメインプログラムへジャンプGOTOするなんて、トリッキーなプログラミングは許されないが、サブルーチンの中で自分自身を呼び出す再帰的呼び出しが可能であるのが特徴だ。

わかりやすいプログラムを書こうという流れで注目を浴びていた言語だ。パソコンにはUCSD(カリフォルニア大学サインディエゴ校)が仮想言語P-systemをベースに実装していた。今で言うとJavaのようなものだろう。
USCD-PASCAL

その頃は一人前にプログラムを作れるようになっていたので、拡張コマンドも含め移植作業は比較的に容易に済んだ。これは1980年5月号に載せてもらっている。

TRS-80という8080ベースでアメリカのマシンを使うというのは、結構言語環境が恵まれていた。1983年時点で使うことができたプログラミング言語はBASIC,BASICコンパイラ,FORTRANコンパイラ、COBOLコンパイラ、UCSD-PASCAL、FORTH、Adaに加え、当時UNIX記述言語として注目され始めたCも使えるというかなり贅沢な環境だった。

しかし、BASICにせよFORTRANにせよ、LP(線形計画法)や売上データの集計や百分率の計算などの縦横演算は、配列変数を使ってプログラムをする必要があった。
その概念をごろっと変えてしまったのが1980年ぐらいに登場したVISICALCの登場だ。表計算ソフトの原点ともいえるプログラムである。VISICALCとの出会いは衝撃的だった。

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