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ポリエステル混生地の羽毛布団

テーマ:羽毛ふとんのお話
さて、前回の続きのお話

2.羽毛布団の側地がポリエステル・ポリエステル混が圧倒的になってきた

従来羽毛布団の側生地は綿100%が圧倒的だった。何年か前の綿花高騰の折に、低価格ランクでポリエステル100%やポリエステル混の側生地が増え、今回の羽毛高騰では中級品まで及んできた。

これはポリエステル混が機能性が良くてそうなったのでは決してなく、単にコスト面でそうなっただけなので情けない。

羽毛布団は側生地が軽いほどよく膨らむ=同じ嵩なら少ない充填量で済むという特徴がある。このことは、本来は推奨すべきで、同じ嵩を出すのに1000gと1100gだったら、羽毛の量が少ない方が空気が多いので、羽毛の本来の良さを活かすことができるからだ。

例えば一般的な60番手サテン生地は 135~140g/㎡。これに1300gの羽毛を入れるとする。
80番手のサテンだと115g/㎡ほどだから 5%ぐらい減らすことができる。さらに 100番手のサテンにすると 生地重量は100~105g/㎡ぐらい これだと10%少ない 1150gぐらいで同量の嵩となる。同じ嵩なら空気が多い方が良いのだ。

ポリエステルを生地に使うと、生地の重量を一気に軽くできる。90g/㎡ぐらいも難しくない。上気の例でいえば1050gぐらいでも同じぐらいの嵩がでることになる。
つまり軽量にすることによって、羽毛の量を減らすことができるので、羽毛高騰の折にはコストダウンにつながる。綿100%で90g/㎡の生地を作ろうとすると、細番手の糸を使う必要があるので、かなり高くなるが、ポリエステルなら逆に綿より安くできることが多い。

ところが、ポリエステルやポリエステル混の生地は通気性が悪いという致命的な欠陥がある。繊維断面が円くなっているために、吹き出し防止のダウンプルーフを強くかけないと羽毛の吹き出しがしやすいからだ。
通気度という通気性を見る指標があるのだが、綿60番手サテンが通気度1.5ccぐらいが多いのに比べ、その半分ぐらいになることが多い。つまり、軽くて嵩はでるけど通気性の悪い蒸れやすい布団ができるわけだ。

羽毛布団の良さは、羽毛が呼吸して温度・湿度を調節してくれることが一番だから、その長所を損ねるような生地を使うことはどうかと思う。

ちなみに私の店で使っているオーストリアHEFEL社の生地は綿100%で重量が70~85g/㎡ 通気度は3㏄以上あって、中に使う羽毛は良いものでないといけないが、蒸れ感とは程遠いさらっとした快適な使い心地が得られる。

気密度が高くなっている現代の住宅では、保温もさることながら、どちらかというと湿度調節が快眠にとっては重要な要素となるのである。

HEFEL社にて

オーストリア・ブレゲンツ近郊のHEFEL社工場にて

蔓延する再生羽毛の混入した羽毛布団

テーマ:羽毛ふとんのお話
我が業界では、この2年間が羽毛布団の環境にとって激震ともいえる。原料価格が2~2.5倍、高品質品に至っては3倍近く上がったものもある。

こうなると、現在大きく2つの現象がでている
1.再生羽毛の混入がかなり増えてきた
2.羽毛布団の側地がポリエステル・ポリエステル混が圧倒的になってきた

再生(中古)羽毛の混入は以前から低価格品に多く見られるといわれてきたのだけど、どうも中級品まで増えてきたらしい。それもかなりな割合で。現在では世界の羽毛の供給の1/3が中古羽毛ともいわれているから、蔓延といわれても不思議ではない。

私の店が仕入れているのは、オーストリアのスリープウェル・カウフマン社と日本の河田フェザー社の2社。いずれも羽毛の品質の高さではトップレベルである。その河田さんがこの春から「真羽毛100%」という表示を始めている。
つまり、トレーサビリティがしっかりしていて、成熟した新羽毛で、日本で洗浄選別したものをいう。

河田さんの話によると、こうでもしない限り相当ひどい羽毛(中国や台湾で洗浄選別されたもの)が日本に入ってきているらしい。前にも書いたが、中国で縫製した側に中国で洗浄した羽毛を日本で吹きこみ充填して仕上げると日本製になるが、こういう羽毛布団が非常な勢いで増えているのである。

このままでは信用問題にかかわるので、トレーサビリティがちゃんと取れるようにしたという。
この結果、シベリアやヴァルダイ、ハンガリーのレギュラークラスの羽毛はラインアップから消えた。当然マザーグースやマザーダックという表示も消えたのである。仕入れを厳密にした結果は、冒頭の通り原料価格が大幅なアップとなっている。

逆に、製品価格をある程度で抑えようとすると、原料を厳密にできない=低級なものを使わざるを得なくなるのである。ある意味当たり前の話だ。
羽毛の場合中を開けて見ることもできないし、開けたところでそれがどのレベルかを確かめるには検査に出す必要があるので、消費者にとってはわからない、というのが現状だろう。

河田さんは、真羽毛以外に、リサイクルダウンという取り組みも行っている。これは、はっきりとリサイクルダウンを銘打って、通常の新毛の場合の倍以上きれいに洗浄(透視度が2000mmという)したものを、一流ブランドのダウンジャケットなどに採用されているのだという。これはこれで大切なことだ。

私の店としては、河田さんの真羽毛レベルの羽毛のみを扱い、「中古羽毛が入っていない?」ということに明快にお応えすることができるように、原料にはより厳しいチェックをしていくつもりである。

真羽毛

本当にあるのかマザーグース

テーマ:羽毛ふとんのお話
一昨日の話の続き

今日、そのことを朝礼で社員の皆さんに説明していて、重大なことに気がついた。

おそらくは陰謀で・・・ヨーロッパではグースのハンドプラッキング(手摘み)が動物虐待ということで3年前から禁止されている。実際は生え変わる直前の羽毛を採るだけなのだが・・・この煽りで、プラッキングを行っていたジプシーのおばちゃんや、なにより真面目に羽毛を育てていた小規模農家が大打撃である。

いままで最高の品質の羽毛が取れるという秋摘みのサードプラッキングと同等の羽毛を得るためには、それまで1回目、2回目といいうプラッキングができないために、羽毛が生え変わるままにしておいて、最終で屠殺した後に手で取るという方法をとっているそうだ。プラッキングがないので、品質は低下し、1番目と2番めで得られる収入が無いので、羽毛の価格はより高くなってしまう、ということだ。

数少ないマザーグースから羽毛を採取するには、屠殺後となってしまう。つまり3~4年の間は羽毛を採ることが非常に難しい。自然に生え変わって落ちる羽毛を集めなければならないからだが、実際はむりなのだから。

ということで、あっても僅少で通常には。本当に良い羽毛であればマザーグース云々は関係ないのである。

グース

困ったマザーグース

テーマ:羽毛ふとんのお話
マザーグースというと、ヨーロッパの童謡をイメージする人が多いと思うが・・

日経 土曜日のプラス1の紙面にお困りサポーターで羽毛布団の選び方があった。

生地そのものは概ね正しいのだが、またまたでてきたのがマザーグース。
食肉として約半年ちょっと飼育される一般のグースと違い、数年飼育され、卵を産むための親鳥である。確かに、親鳥には体格の良い鳥が選別されるので、採れる羽毛は確かにいいはずだ。

ところが、毎年ヨーロッパへ羽毛の仕入れに行っているが、マザーグースと名前が付けられたものを私は見たことがない。ずいぶん前にハンガリーのゴドロ農業大学の試験場を訪れたことがあった。
ゴドロ農業大学

確かにマザーグースは居て、卵を一生懸命産んでいる。その卵を孵化して農場へ送り届けるのが役割らしいが、そうそうどこにでもいるものではないらしい。

河田フェザーさんといえば、日本でも有数の羽毛原料メーカーで品質は折り紙付きだ。昨年までは商品リストに「ポーランドマザーグース」というのがあった。ポーランド産の中のトップクラスの原料を指すのだが、昨年からはなくなってしまった。
市場での中古羽毛の混入などあまりに現状がひどいので、トレーサビリティがちゃんとした本物しか扱わないと会社で決めたために、産出先がちゃんと確定しない羽毛はほとんどリストから外れてしまった。当然マザーグースという言葉もなくなっている。

現状では本当の親鳥から採られた羽毛は僅少だといえる。世の中にはとんでもない量のマザーグースやマザーダックが出回っているが、本当に本当なのか?羽毛布団の現場に居るものとしては、到底信じられない。
ダウンの質を表す指標はダウンパワーとしてあるのだから、良質のモノをマザーグースと称して、あたかも親鳥から取りましたよと説明するとは止めるべきではないか?

と言っても、この業界は変わらんだろうなぁ。
「マザーグース」もどきには十分ご注意を。

羽毛布団のリフォームはした方がいいのか?

テーマ:羽毛ふとんのお話
ここ数日、毎日数枚の羽毛布団のリフォーム作業を行っている。私の店では店内に国内屈指の設備を揃えているので、下請け加工には決して出すことはない。解体から、最後の充填仕上げまで私が羽毛の状態を確かめながら行っている。

羽毛工房

さて、「羽毛布団のリフォームはした方がいいのか?」というお問い合わせを良くいただく。
というのも、リフォームの代金が安い新品の羽毛布団を買うぐらいかかってしまうからで、お客様がお悩みになるのも無理はないと思う。

今日、2001年にお買い上げいただいたクイーンサイズの羽毛布団のリフォームを行った。当店で仕立た手作り羽毛布団で中身は当時かさ高16㎝の四川省ホワイトグースダウン(当店では標準的な羽毛である)を入れたものだ・・・が、洗ってみて、改めて原料の良さを実感することができた。現在ではDP390~400の羽毛だが、正直昔の原料の方が質が良い。ゴミも少ないし、ダウンボールも大きい。

これは、近年ちゃんと飼育できている農場が少ないためであるし、今のように金儲けに走る中国でない頃の四川省の原料だから、天然に近い飼育がなされていた=良い原料だからだ。残念ながら、今日ではこんなに真面目に飼育された中国原料を手に入れることは不可能に近く、当時に比べると同等クラスの原料価格は今や4倍以上している。

それ故、過去にそれなりの価格を出されてお求めになった羽毛布団なら、断然リフォームをおすすめする。特に良質のグースダウンは高騰しているので、お迷いになる要素はまずない、といっていいだろう。昨今は中古羽毛の混入率が非常に高くなっているので、中古羽毛が半分近く入っている新品羽毛をお求めになることもないと思うのである。
(ただし、グースといっても訪販系でお求めになった場合、高額で買われていても???というのも少なからずあるので、店頭でチェックさせていただいている)

リフォーム

中身の羽毛はもちろんだが、実際に使用感を決めるのは側生地が重要だ。いくら良い中身をリフォームしても、重く硬い生地ではその良さを生かすことができない。少なくとも購入時と同じクラスのレベルの側をおすすめしたい。あとで、「しまった!こんなはずでは」と思って10年過ごすことを避けるためにも。

かつて羽毛布団はかさ高競争を行っていた時期があるが、機密度が高い部屋が増えた今日、寝室と体質に合わせて最適な羽毛の量を選ぶことをお勧めする。私は汗かきだから良くわかるが、ポンポンにふくらんだ羽毛布団は12月にでもならないと使えない。適度な暑さにして、毛布などでコントロールするのがベストなのだ。

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曳山博物館前の眠りのプロショップSawadaのオーナー
睡眠指導士や睡眠環境コーディネーターの資格を持ち、日夜快眠実現のために、いろいろと寝具やベッドの研究を続けています。

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