エアーウィーブ・マニフレックスなどマットレスの耐久性について

テーマ:眠るための道具・寝具のお話
最近いろいろなマットレスが話題になっている。
確かに睡眠にとって寝姿勢を保持して、ストレスのない睡眠環境を得るためには敷寝具を見直すことが大切である。

さて、その耐久性の問題についてお客様からいろいろと質問を受けることも多い。
まず、マニフレックスの12年保証の問題。品物にもよるが、マニフレックスでは12年とか15年の保証をしていて、通販サイトなどでも12年使えますよ!と謳っていることが多い。

ところが、おっとどっこいである。
私の店でも販売時には必ず確認することにしているが、この保証は「変形保証」である。保証内容に「へたり=明らかに変形した場合」と書いている。12年間変形しないことを保証しますよ、ということだ。一般にこの手のマットレスはLGAというドイツの変形テストを受けることが多い(JISだとK6400-4に相当)。素材を50%変形して8万回繰り返し、その後にどの程度変形するか・弾力性変化があるかを試験するものだ。
実のところ、マットレスに使われるまっとうなウレタン素材だと、この試験はほとんどがパスをすると言って良いだろう。変形率2~4%で収まるのがほとんどだ。マニフレックスの場合2.5%だから順当といって良い。

それでは、「へたり」はどう感じられるのかというと、これは「弾性変化」によってもたらされる。敷寝具に荷重をかける(つまり人が乗る)と重量に応じて変形するが、その変形が大きくなるのだ。新品時にお尻の部分の沈み込みが1cmだとすると、これが3cmにもなると「へたった」と感じられる。腰が落ち込むと腰痛の原因などになるので、人によっては使用しつづけることが困難となる。それでも見た目の変形はほとんどない。

12年保証と言ってしまうと、消費者としては12年間使用し続けることができると錯覚してしまうが、実際のところ5~8年というところだろうか。マニフレックスのHPには金属スプリングのマットレスの耐用年数は4年ですとあるが、これも安いスプリングならさらに短く、良いスプリングなら10年近くは問題ない。もちろん体重が重いと、耐用年数は下がるというのは、普通に考えれば当たり前のことである。

ラテックスマットレスなども耐久性は比較的に高い方だが、それでも弾性劣化は起こるので多くの場合腰部を硬くするなどの対策が取られている。

さて、エアウィーブはもうちょっと深刻に思われる。

これは同じような素材でも老舗格の東洋紡ブレスエアーとのテスト結果がある。
「有名類似商品」と書かれているが、明らかにエアーウィーブのことだろう。

エアーウィーブテスト
身長176cm体重65㎏の男性が、人の体温想定環境(36度)で3カ月間敷布団として使用した前提。
敷布団で最も圧の大きい腰部のヘタリを計測。とある。

エアーウィーブとブレスエア

ブレスエアーの復元率93%に対し、78%とかなりむごい結果になってしまっている。私としてはブレスエアーでも、それなりにへたるよね、と思っていたから、この結果はちょっとひどいと感じた。よく売れているそうだが、軽量な人はともかく、正直心配である。

もともとエアーウィーブは熱に弱い(電気毛布が使えない)。しかしながら、ブレスエアーやエアーウィーブ、E-COREなどの空気を多く含む素材は、夏は空気の循環が早くて良いが、冬はそれが逆に作用して保温力が弱い(=寒い)。基本的にはウールの敷パッドなど。吸湿保温性に富んだ素材と組み合わせるのがベストなのだ。

エアーウィーブはフリーのブログにある否定的なコメントについてはクレームを付けて削除をしているらしい、私の友人が検索エンジンの十位以内にあったので消されてしまったそうだ。一方で、ちょうちんHPを作って(としか見えない)、否定的な見解を打ち消すような内容にしている(へたるけど、重要なことではないよね みたいな記事ががあったのにはびっくり)。一度検索してみるとよく分かる。
そこまでするか、と思ったが、ある意味ここまで情報コントロールを徹底するのは大したものだと思った。

エアーウィーブと元は一緒と言われるE-COREは、耐久テストはまあまあ
ただ、100℃では著しく変形した、とあるから、一般的にポリエチレン系は熱に弱いのではないか?

この情報自身もそうだけど、ネットの情報は単純に鵜呑みしないようにすることが大事だし、なにより、自分で確かめることが一番肝要だろう。

リネンの畑から

テーマ:眠るための道具・寝具のお話
6月に訪れたフランス・ノルマンディーのTERRE DE LINのNizery女史がリネン畑の最新情報を送ってくれた。

先月に訪れたのはリネン(フラックス)の花が開花したところ
リネン

7月になると実がなり、刈り取り(正確には引き抜く)となる。訪れた時には最新の機具が入ったばかりの時。
こんな感じ
リネンの収穫機具

このキカイを使って、こんな具合に収穫するのだけど、畑から抜いたらそのまま畑に寝かしておく
リネン収穫中

リネン畑

この状態で1ヶ月~1ヶ月半ほど置いておくと、表皮が乾燥するので回収をする。
このようにすることで、その中にあるリネンの繊維が取り出しやすくなるからだ。

フラックス

このように収穫されたフラックスはスカッチングという工程に移る
リネンのスカッチング

リネン・スカッチング後

そして紡績工場へ出荷されることになる
フラックス

このパターンがほとんどだそうだ。昨年にリトアニアのシウラスへ訪れた際もこの状態からの紡績を行っていた。
たださらにここからカーディングして、スライバーと呼ばれる紡績の一歩手前まで加工する場合があるという。

リネンのカーディング

リネンのスライバー

輸出先は80%が中国。一般的にフランスリネンと呼ばれる場合は、フランス産の原料を中国で紡績・製織しているのがほとんどだ。残りは地元のフランスやベルギー、リトアニア、イタリアなどに出荷されることになる。もちろん天然素材だから、リネンの品質も10等級に分けられて出荷されるという。一口にフランスリネンといっても同じ品質ではないということだ。
中国にもリネン草(フラックス)はあるのだが、品質的には今一で、生成りの色もあまり良くないという。

新しいフランスリネン生地

さて、先日仕上がってきた当店オリジナルの新しいフランスリネン生地は英ハードマンズ社認定工場の生機を使っている。なので「アイリッシュリネン」と表示できるのだが、「アイルランド製」(本当はもう無い)と誤解を得やすい。が、染色も仕上げも日本で行ったので、ハードマンズらしい素晴らしい出来上がりとなった。


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曳山博物館前の眠りのプロショップSawadaのオーナー
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